アキのKEIルポ 5月の風物詩ブーイング

 身びいき、判官びいきはどの国、どこの会場でもあることだが、ローランギャロスの観客のそれは、世界で最も激しく残酷なように思う。特定の選手を応援し始めたら、最後までその手を緩めない。

 ブーイングは5月のパリの風物詩。数年前には誤ってラリー中にコートに入ったボールボーイすら、手厳しいブーイングの標的になった。

 錦織圭の5度目のフレンチオープンは、そんなアウェーで幕を開けた。対戦相手は、地元のポールアンリ・マチュー。艱難(かんなん)辛苦を経ている33歳のベテランは、観客を味方につける要素満載。果たして第2セットでは、錦織の幸運なコードボール(ネットイン)にすら一斉にブーイングが沸き起こる。

 だがそんな逆境も物ともせず、錦織はさっそう、ストレート勝利をコートから持ち帰った。

 「あのブーイングは不当なものだった。プレーに影響はなかったか?」。試合後の会見のこと。地元記者ですら申し訳なく思ったか、そんな質問が向けられた。

 「特に気にならなかった。集中している時は、外野の声は聞こえない」。世界5位は事もなげに返答する。地元選手を倒した者には、その後、敬意を表し優しくなるのもパリの特性。逆風は追い風に変わり、きっと、赤土の新王者候補の背を押していく。

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 世界を転戦するツアーを追い、錦織圭の全米の準優勝、全豪ベスト8も取材した「アキさん」、フリーライター内田暁さん(40)が、灼熱の戦いの舞台、パリから現地報告する。


 うちだ・あかつき 大手編集プロダクション勤務を経て、2004年からフリーランス。テニスを中心に専門誌やネット媒体で発信中。プロテニスツアーで錦織圭を追い、4月には松江市を訪れ、関係者取材も。京都府在住。

2015年5月26日 無断転載禁止

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