アキのKEIルポ アウェー戦で力証明を

 「ここまでの大歓声に会場が覆われるのか」と、あらためて驚かされた。地元フランスの人気選手ジョーウィルフリード・ツォンガが、4回戦で第4シードのトマーシュ・ベルディハを破った瞬間のことである。

 開幕前にドローについて問われた時、錦織は「確認するのは次の対戦相手だけです」と言った。報道陣やファンは、ドローを目で追い上位陣の対戦予想に花を咲かせるが、全仏のコートでは「順当」などという言葉は簡単に土に埋もれていく。

 シード順でいけば3回戦で当たるはずだったF・ベルダスコも4回戦のF・ロペスも、そして準々決勝の相手と思われたベルディハの姿も、もはやない。

 現実に目の前にいるのは、大声援を背に勝ち上がった地元のスター選手。「ファンの声は力になる。時に不公平なほどにサポートしてくれるからね」。そう言いツォンガは人懐っこい笑みを浮かべる。

 「地元選手の怖さは少なからずある。特に全仏の応援はなかなかすごいので」。錦織は表情を引き締めた。

 過去の対戦成績は錦織の4勝1敗。だがクレーでの対戦が初なら全仏でも初。もはや“順当”は存在しない。完全なるアウェーの戦いに身を投じ、強さの証明たる勝利を奪い取りにいく。

 (フリーライター・内田暁)

2015年6月2日 無断転載禁止