特派員便り サングラスの奥の思い

変わらぬ勝利への執念

 試合の有無にかかわらず、その日の練習日程はセンターコート内にあるプレスセンターで毎朝発表される。机の上に高く積まれた一枚紙を手に取り、目当ての名前を見つけて時間、コートを確認する。

 錦織選手が大会初日に1回戦を突破し、次戦に向けた調整ぶりを取材しようと思っていた第2日からの2日間、日程表に、その名前がなく、慌てた。

 後で聞けば、ローランギャロス近くのコートで軽めの練習を行っていたらしい。

 2回戦当日、ようやく公開練習が行われ、出掛けたコートで初めて、錦織選手のコーチ、マイケル・チャン氏を目にした。

 同選手の後ろに立ち、サングラスの奥から動きやボールの軌道をじっと見詰め、時折、身ぶり手ぶりを交えてアドバイスをする。会場のピンと張った空気は、現役当時と変わらぬ勝利への執念を今も燃やす、彼の存在がつくり出しているようだ。

 試合のない日は1時間、ある日は30分。その後、何度か練習を取材したが、今のところ笑顔を見たことがない。サングラスを外し、細めた「師」の目には、かつて史上最年少で自らが栄冠を手にした最終日のセンターコートが、はっきり映っている。その確信は、日増しに強まっている。

2015年6月3日 無断転載禁止