躍進 全米準優勝(1) 柔軟思考で意見を吸収

 テニスの四大大会、全米オープンで松江市出身の錦織圭(日清食品)が、四大大会シングルスで日本人初の準優勝を成し遂げた。正確なストロークと強靱(きょうじん)な精神力で世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)ら上位選手を撃破。錦織が幼少時から描く「四大大会制覇」も現実味を帯びる。春のクレーコートシーズンで覚醒し、全米で日本テニス界の歴史を大きく塗り替えた錦織。躍進の要因などについて関係者に聞いた。


元女子トップ選手 杉山 愛氏
 全米オープン決勝の舞台に立った圭を見て衝撃を受けた。ストロークとヒット力が素晴らしく、ジュニア時代から持ち合わせてきた才能を開花させた。これまで本当に厳しい道のりを乗り越えてきたんだと感動した。

 圭の「テニス脳」の高さに加え、純粋で柔軟な思考が躍進した理由の一つだ。プロになった直後の17、18歳の時、試合中に足がけいれんしてしまうとの相談を受け、飲み物に塩を入れて飲むようアドバイスした。すぐに「やってよかったです」と報告してくれた。乾いたスポンジのように吸収して受け入れる資質がある。

 技術面でも向上心を持っている。かつて圭のウィンブルドン選手権を解説した際、両足で地面を蹴り上げるようにショットを打てば、膝の痛みが軽減すると指摘した時も、大会期間中に試して声掛けしてくれた。他人の意見をシャットアウトするのも聞き過ぎるのも良くないが、そのバランスが絶妙だ。

 以前は大会を終えて「気になった点がありましたか?」と自分に相談を持ちかけてきた。もっと他人のアドバイスを欲しているんだなと思った。

 そんな中、マイケル・チャン氏がコーチに就くと聞き、最高の人選だと思った。3年前に圭やチャン氏らと食事をする機会があったが、当時から心地よい関係を築いていた。チャン氏はハードな練習を重ねて徹底的に追い込む一方、人情にも厚い。オンとオフの切り替えなど学ぶ点は多い。今は全ての面でチャン氏から教わっているはずだ。

 全米オープンで決勝という未体験の舞台を経験したのは糧になる。既に実力はトップクラス。自分のテニスを出し切れば、スタニスラス・ワウリンカ(スイス、世界ランキング4位)、ノバク・ジョコビッチら上位選手に実力勝負を挑んでも十分に勝てる。

 現在は、年間獲得ポイントの上位8人で争うツアーファイナル出場(11月・ロンドン)に標準を定めているだろうが、今後はもっと上を目指すだろう。四大大会で決勝を狙える存在となり、夢の頂点にたどり着く日を楽しみにしている。


 すぎやま・あい 1992年に17歳3カ月でプロ転向。99年全米オープン混合ダブルスで四大大会初優勝を果たし、四大大会女子ダブルスで3度優勝した。シングルス最高成績は2000年全豪オープン、04年ウィンブルドン選手権の8強。自己最高の世界ランキングはシングルス8位、ダブルス1位。09年に引退し、解説者などを務める。横浜市出身。39歳。

2014年9月22日 無断転載禁止

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