躍進 全米準優勝(2) 重圧跳ね除ける精神力

テレビ解説者 坂本 正秀氏
 他のトップ選手と比べても、圭の発想力やスピード、戦術的な組み立ては本当に素晴らしい。野球で例えると、160キロの剛速球でねじ伏せる投手ではないが、多彩な変化球を駆使して相手を手玉に取るタイプだ。

 圭は(狙った場所に打つ)プレースメントに優れ、ドロップショットなど数々の引き出しを持っているが、ジュニア時代からその片りんを見せていた。留学先のIMGアカデミー(米国)での練習でもショットを放つだけでなく、自発的に考えて多彩なショットを試していた。

 世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)と対戦した準決勝でテレビ解説をした。直前の右足のけがに加え、4時間を超す連戦の疲れもあり、圭の第1セットの入りに注目していた。実際は、想定したよりも軽快で硬さもなかった。一方のジョコビッチは圭を警戒しすぎていた。挑戦者の気持ちで試合を楽しんだ圭が勝てたのだろう。

 だが、これまで四大大会7度の優勝を誇るジョコビッチはまだ総合力で圭を上回っている。次の対戦でも簡単に勝てる相手ではないのは確かだ。

 圭の秀でた点はオンとオフの切り替えにある。全米オープン決勝の前日も共に食事をしたが、大舞台を翌日に控えているとは思えないほど普通だった。相当な重圧がのしかかっているにもかかわらず普段通り過ごせる精神力は尋常ではない。

 コートを離れると、対戦相手とも和やかに会話し、誰からも好かれる人間関係を築いている。今回の活躍で世界での認知度はさらに上がったが、決勝で会場を埋めた観客が大きな「ケイ・コール」を送ったように、世界のファンに愛される存在になった。

 四大大会の5セットマッチの戦い方も身に付けたようだ。これまでは1、2回戦で体力を使い、上位選手と当たる3回戦以降は疲労の色が濃かった。2回戦で相手が途中棄権したのもあるが、勝負どころまではある程度、力を抜き、最後まで体力をセーブできた。

 四大大会準優勝は他のテニス選手に日本人でもできるという自信と希望を与えてくれた。圭は既に期待以上の成果を残した。今後もツアーを転戦する中で、けがをせずテニスを楽しんでほしい。


 さかもと・まさひで WOWOW解説者。世界で活躍する選手を指導する日本テニス協会公認のS級エリートコーチ。テニスの名門・米ペパーダイン大で主将を務め、卒業後は実業団で活躍した。東京都武蔵野市出身。40歳。

2014年9月23日 無断転載禁止