躍進 全米準優勝(4) ファイナル常連に期待

プロテニス選手 鈴木 貴男氏
 圭は世界トップ10以上になれる逸材だと感じていたが、今回の全米オープン準優勝は「予想以上に(ブレークが)早かった」というのが率直な印象だ。

 プレースタイルは、小学6年時から変わっていない。優勝した全国小学生大会では、遊び心を持ってボールを自由自在に操り、段違いのレベルだった。勝ちにこだわる他選手に比べ、真剣ながらも余裕があり、天性の素質を感じさせた。

 今回の全米は、準決勝で世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)を破ったことに価値がある。ジョコビッチは簡単に崩れないと予想していたが、最初の2~3ゲーム終えた時点で表情が曇っていた。圭がセットカウント2-1とリードした第4セット開始前は、既にジョコビッチの焦点は定まっていなかった。

 世界1位の選手でも重圧を感じ、良いテニスをしたら負けるんだと圭があらためて教えてくれた。

 今後は上位選手との対戦機会が増えてくる。相手選手や監督、コーチ間で直ちに情報が共有され、研究される存在になるだろう。圭がどう乗り越えていくのか楽しみだ。

 圭はショットやフットワーク、体力、精神面とも穴はない。サーブの使い方や確率、サーブ後の展開を少しでも高めれば、さらに隙がなくなり、もう一段上のレベルに達するだろう。ただ、世界には想像を超える若手選手が常に出てくる。圭も全米で結果を出し、より努力したいと思っているはずだ。

 今後は上位8人で争うツアーファイナル(11月・ロンドン)に出場し続けてほしい。毎年、出場してこそ世界1位が見えてくる。

 日本テニス界にとっては今が正念場だ。放映権のなかったテレビ局は、決勝のライブスコアをテレビ画面に表示して試合経過を伝えるなどメディアが一大ブームを巻き起こしてくれた。彼を継続的に支える土台をつくり、ブームを持続できるかどうかが試される。

 今回の躍進で新たに圭のファンになった人には、テニスは常に結果が変わるスポーツだと認識してほしい。選手の状態は1週間、1日単位で変化する。過去の対戦成績で大きく勝ち越していても同じ結果にならないのがテニス。「錦織圭」という選手を通じて世界の選手の情報も知り、楽しんで見てほしい。


 すずき・たかお プロテニス選手。堀越学園高(東京)時代に全国高校総体で単複・団体の3冠を達成し、卒業した1995年にプロ転向。2001年ジャパンオープンのシングルスで錦織のコーチを務めるマイケル・チャンを下して8強入りした。05年の同大会ダブルスでは岩渕聡(現デ杯コーチ)と組み、ツアー制度導入後、日本男子として初優勝。最高世界ランキングはシングルス102位、ダブルス119位。札幌市出身。38歳。

2014年9月25日 無断転載禁止

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