覚醒 トップ10(2) より技術磨き強い心を

日本人初のトーナメントプロ選手 神和住 純氏
 錦織が準優勝した今月のマドリード・オープンを終え、テレビ解説を務めた村上武資氏(女子国別対抗戦・フェド杯代表監督)と話をしたが、マドリード・オープンで見せた錦織の技術は本当に高かった。

 ラファエル・ナダル(スペイン、世界1位)との決勝(けがで途中棄権)は攻撃的な姿勢が光った。ストロークではベースラインの内側に入り、ナダルよりも早いタイミングで仕掛け、バックハンドもクロスやストレートに打ち分けた。ストロークでは全く引けを取っていなかった。

 サーブも改善された。時速200キロを超さないまでも、190~200キロのサーブを素晴らしい角度で入れていた。特に劣勢の場面でサーブを起点にしのげるようになったのは大きい。

 対ナダルを考えると、縦の動きを取り入れることだ。ナダルは横への揺さぶりを苦にしないタイプだけに、ネット際に落とすドロップショットを交えて前後に動かせば、その後の流れをつくるきっかけになる。多様なショットを駆使する錦織ならば、十分使いこなせるだろう。

 新コーチに就いた元全仏王者のマイケル・チャン氏は、近くにいるだけで錦織に安心感を与えていると思う。アンディ・マレー(英国、世界8位)も勝てない時期があったが、元世界1位のイワン・レンドル(米国)をコーチに招き、昨年のウィンブルドンで優勝した。

 テニスは孤独な戦いで、試合中はコーチでさえも細かい指示は出せないが、経験豊富なコーチが目配せしてくれるだけでも選手は落ち着ける。

 コンピューターによる現行のランキング制度は、自分がツアープロとして第一歩を踏み出した1973年に始まった。振り返ると、現役時代は毎週の発表に一喜一憂したものだが、錦織にとってトップ10は通過点にすぎない。彼の目標はあくまでトップ5、四大大会の優勝。まずはトップ10に定着してほしい。

 メンタル面も重要度を増してくる。以前、男子国別対抗戦・デ杯で、監督待遇のスーパーバイザーを務めた世界的コーチのボブ・ブレッド氏(オーストラリア)が「39度の発熱は風邪じゃない」と日本の代表選手を鼓舞し、勝利に導いてくれたのを思い出す。

 最後のタイブレークで、相手より少しだけ速く動けるか、ほんのわずかの差で勝負は決まる。錦織には、どんな状況でも絶対に諦めない強い心を持ってほしい。


 かみわずみ・じゅん 法大スポーツ健康学部教授。1973年に日本初のトーナメントプロとなり、男子の国別対抗戦・デ杯には日本人最多の37試合に出場した。最高世界ランキングは78位。86年に引退し、スポーツキャスターなどを経て97年から7年間、デ杯代表監督を務めた。石川県中能登町出身。66歳。

2014年5月21日 無断転載禁止