覚醒 トップ10(3) 圭の存在他選手の励み

元日本代表選手 岩渕 聡氏
 自分の現役時代は松岡修造さんが日本テニス界を引っ張り、相当苦労して世界ランキング46位までたどり着いたのを見ていた。トップ10は異次元の世界。(錦織)圭が出現するまでは、日本の男子選手がトップ10に入るとは想像できなかった。

 圭は2008年にデルレービーチ国際でツアー初優勝した18歳の時から、トップ10の片りんを見せていた。

 才能がある選手の中でも地味な練習を重ねてきたのが、他の選手との大きな違いだ。09年にけがで長期離脱し、世界56位からランキング圏外になった時も黙々とリハビリに励んでいた。

 純粋で誰からも愛される人柄も有利に働いている。

 4月の国別対抗戦・デ杯準々決勝(錦織はけがで欠場)では、デ杯のサポートのためだけに帰国し、裏方に徹してくれた。

 けがの治療に専念してもおかしくなかったと思う。その中であえて帰国したのは、孤独なツアー生活を送る中で、気心の知れた仲間との触れ合いが、リフレッシュの場になると判断したからだろう。

 日本の絶対的エースとなった圭の存在は、他の代表選手の励みにもなっている。若い選手たちは、圭が控室でどんなトレーニングをこなしているのかを間近で見て、刺激を受けたようだ。

 今月のマドリード・オープンの決勝はボールの鋭さが際立った。ラファエル・ナダル(スペイン、世界1位)を相手に、休まず強いボールを打ち続け、(錦織が負傷するまで)ナダルは防戦一方だった。

 コースが抜群な上に球威があり、厳しいトレーニングの成果が表れていた。クレーコートでも、まるでハードコートのように迷いなくプレーしていた。

 圭はもともとボールの捉え方が絶妙で、フォア、バックとも世界トップと遜色ない。元世界1位のロジャー・フェデラー(スイス、世界4位)はバックハンドが片手打ちのため、高く跳ね上がった球は強く打ち切れていないが、圭は両手でしっかりとたたいている。ラリーではどの選手にも勝っている。

 自分の肉体以上に技術が上回り、そこに体を追いつけようとしているから、けがをするのは仕方ない。昨年の全仏オープンは優勝したナダルに4回戦で負け、まだ差があるように感じたが、今回は確実に優勝に絡んでくる選手と言える。課題はフィジカルだけだ。


 いわぶち・さとし 高校卒業後の1994年にプロ転向。2005年ジャパン・オープンのダブルスでは鈴木貴男と組み、現行男子ツアー制度導入後、日本人同士のペアとして初優勝を飾った。最高世界ランキングはシングルス223位、ダブルス125位。09年に引退し、11年から男子の国別対抗戦・デ杯代表コーチ。神奈川県茅ケ崎市出身。38歳。

2014年5月22日 無断転載禁止