覚醒 トップ10(4) 試合組み立てる力秀逸

元デ杯監督 竹内 映二氏
 現在の(錦織)圭は等身大のテニスができている。フォアの強打とバックの正確性に、圭の真骨頂である粘りが絡み合っている。

 リターン力が増したのが躍進の要因だ。相手サーブのスピードと変化に対応し、前に出た時も下がった時も、ブロック(ラケット面を固定する打ち方)でも次の展開を見据えたリターンをしている。

 リターン力はプロテニス選手協会(ATP)の部門ランキングで、圭の世界ランキング10位より上位につけている(リターンゲームの奪取率、ファーストサーブのリターン得点率はともに世界3位)。

 相手の甘いサーブを確実に得点に結びつけているが、さらなるリターン力の底上げがトップ5に入る鍵になるだろう。

 結果の残せなかったクレーコートで今季は優勝と準優勝の好成績を収めている。もともと圭は日本人選手の誰よりもクレーでのプレーがうまい。実際、クレーで戦った2006年の全仏オープンジュニアのダブルスで優勝している。

 多くの選手は表面の硬いハードコートのシーズン(1~3月)から、クレーコートのシーズン(4~6月)への移行に苦しむが、幅広い戦術を使える圭は苦にしていない。

 逆に芝のウィンブルドンで成績を残せないでいる。強力なサーブを持つ相手と対戦した場合、サーブのバウンドが、芝は他のコートよりも低く滑ってくるため、ブレーク力は落ちる。圭も芝の課題を自覚しているようだ。

 ただ、圭自身もサーブ力が向上している。上位選手のようにサービスゲームで高いキープ率を保てば、トップ5に近づける。

 テニスはサッカーのように自陣でボールを回し、時間を割いて攻撃を組み立てられない。1球ごとに相手に主導権を渡す中、その後の戦術を考えるのは簡単ではなく、走りながら将棋を指しているようなものだ。

 その中でも、圭は試合を組み立てる力が優れている。長時間の試合となり、疲れがピークに達していても根性論ではなく、戦術的に諦めていない。

 目先の世界ランキングや大会にとらわれるな、と言いたい。マイケル・チャンコーチと戦術を立て、体力と相談しながら、大会に参加するべきだ。

 クレー王者のラファエル・ナダル(スペイン、世界1位)をクレーで倒す姿が見たい。現在の上位選手は、圭よりも年上の選手ばかりのため、先に引退してしまう。その前にトップ選手から勝利をもぎ取り、真の実力を世界に証明してほしい。


 たけうち・えいじ 日本テニス協会強化本部副本部長。1978年から米国シュライナー・ジュニア大へ2年間テニス留学し、プロ転向。最高世界ランキングはダブルス120位。91年からコーチ活動を始め、2005年から8年間、男子の国別対抗戦・デ杯の代表監督を務めた。京都市出身。55歳。

2014年5月23日 無断転載禁止