アキのKEIルポ 優勝につながる8強入り

 一つ、忘れてはいけないことがある。

 錦織圭は、間違いなく強くなった。だが、強くなっているのは錦織だけではないという現実だ。世界1位のノバク・ジョコビッチも、3位のアンディ・マリーも確実に成長を遂げている。

 ジョコビッチは今季、全仏に入るまで35勝2敗。しかも、グランドスラムとマスターズ1000では負け知らずという、驚異の勝負強さを誇る。ラファエル・ナダルやロジャー・フェデラーが「彼は今が一番強い」と言えば、本人も「確かに今自分はキャリアのピークにいるかもしれない」と認めるほどの、全盛期の最中にいる。

 今回の全仏ベスト4のマリーは、今季クレー無敗でパリに入ってきていた。「クレーで育っていない選手にとって、このコートの特性に慣れるのは難しい。僕は今季、ようやくクレーのコツがわかったし、勝利を得て自信もつけた」とマリーは言う。

 ジョコビッチとマリーは、いずれも先月28歳を迎えたばかり。また、今大会で決勝に進んだスタン・バブリンカも、昨年の全豪優勝後のプレッシャーから抜け出し、再び上昇モードに戻ったところだ。追い上げる錦織を上位陣は足踏みして待ってくれている訳ではない。

 その中で、錦織の今季グランドスラム2大会連続ベスト8は、十分に評価できる結果だろう。今の錦織がまず目指すべきは、常にベスト8以上に入ること。そして8位以内のシードを維持し続けること。そうすれば上位進出の可能性は、いつか必ず開けてくる。

 例えばマリーが、出場した四大大会で続けてベスト8以上に進むようになったのは2011年のこと。初優勝は12年の全米で、それまでに4度準優勝に泣いている。

 ジョコビッチも09年までは4回戦前の敗退があったが、10年からは全ての四大大会でベスト8以上を記録。彼の黄金期が始まったのは、翌年の11年である。

 なお、ジョコビッチは初のタイトルを手にするまでに四大大会でベスト4を2度、準優勝を1度経験している。バブリンカも3回のベスト8と1度のベスト4の後に全豪で優勝した。

 日本人にとっては錦織の全米準優勝があまりに鮮烈な印象を残すが、それより以前に彼がグランドスラムのベスト8以上に進んだのは、12年全豪の1度のみ。ちなみに全米決勝で錦織を破ったマリン・チリッチも、それ以前に3度のベスト8と1度のベスト4の実績がある。

 そのような意味では錦織は、今回のベスト8でようやく、優勝を狙う最低限の経験値に達したと言えるのかもしれない。

 (フリーライター・内田暁)

     =おわり=

2015年6月8日 無断転載禁止

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