映画プロデューサーのささやかな日常(27)

脚本は映画の設計図。さまざまな素材を煮込んだスープのようでもある
 脚本はグツグツと煮込んだスープ

   どんな“お味”か楽しみに

 現在、新作映画の脚本を鋭意制作しています。ウィキペディアによると、脚本とは「『何時(いつ)。何処(どこ)で。誰が』の天地人を示す柱書き、台詞(せりふ)、ト書きだけで構成された設計図的役割を担うテキスト」とあります。要するに、実際の撮影を想定し、5W1Hをはっきり伝える説明文と登場人物の台詞のみで構成された文章です。

 脚本が完成すると、それを元に撮影シーンの「場所と時間」が決まり、それに合わせて必要な要素である俳優や美術、小道具、衣装、エキストラなどを用意します。

 スタッフは、カメラ撮影する撮影部、ライトを当てる照明部、撮影場所を探す制作部、衣装を準備する衣装部、小道具やセットを担当する美術部など、パートごとに専門化されています。最近はこれらに加え、撮影した映像をデジタル加工し、存在しない背景を作り上げたり、映っていてはいけない“バレもの”を消したりするCG部も大きな役割を担っています。

 さて、その脚本ですが、今まで述べた通り、映画の心臓部であり設計図であり、一度決めたら基本的には変更できないため、映画製作においては最も重要な要素です。

 今取りかかっている作品は、とあるコミック(全7巻)が原作。漫画としては素晴らしく完成された世界ですが、すべての要素をそのまま並べただけでは映画になりません。そこで脚本家とプロデューサー(時に監督も)が参加し、話し合いながら全体の構成をあらためて考えていきます。

 今回はプロデューサーが3人。松竹からは僕と後輩の女性。そして、テレビドラマを作り続けてきた外部のベテランプロデューサーに加わっていただきました。彼もまたこの原作に感動し、映画化しようと考えた一人です。

 まず、依頼する女性脚本家を決め、彼女との打ち合わせが始まりました。この映画全体のテーマはどこにあるのか? 誰に向けてつくるのか? 最初はそんな大きな部分から始めます。

 主人公の男の子の性格は穏やかか、むしろ内省的か? それとも単純な愛すべきバカなのか? そんな風に議論を重ねつつ、だいたい2週間に1回のペースで脚本家が修正して書いてきたものを読み、それぞれ感想とアイデアを出しながら、少しずつ練り上げます。

 みんなで作者の「想(おも)い」をおもんぱかりつつ、原作に対するそれぞれの「解釈」と「愛情」を混ぜ合わせ、ベストの完成形を目指していく-。脚本とはいわば、さまざまな素材と隠し味のスパイスをグツグツ煮込んだスープのようなものでしょうか。

 『わが母の記』のときはプロデューサーは僕一人で、原田眞人監督が脚本家を兼任していたので、いつも二人きりの「サシ」で話し合っていました。今回は趣が異なり、楽しい作業となっています。

 撮影は11月の予定で、皆さんの前にお届けできるのは来年の秋ごろになりそうです。さて、どんな“お味”に仕上がっているでしょうか? お楽しみに。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2015年6月12日 無断転載禁止