映画プロデューサーのささやかな日常(28)

空模様を見ながら進む撮影。忍耐とアイデアで作品を紡いでいく
 “天気”と“季節”待ちが仕事

   重要な忍耐とアイデア

 まさに梅雨まっただ中、じめじめとした毎日ですね。天気予報に反して少し晴れたり、曇り予報のはずが雨だったりと、気候の不安定な日が続きます。

 実は映画のプロデューサーにとって、撮影時の天気ほど気に病むことはありません。雨が降ったりやんだりする撮影現場で、スマホアプリの雨雲レーダーをしょっちゅうのぞいては、どうすることもできずに、ため息をつくこともしばしばです。

 映画の撮影全体は最低3週間から長い作品では数カ月にわたり、予定がびっしり組まれています。屋外ロケに加え、ロケ地によっては日曜日しかお借りできないオフィスや学校、平日の深夜限定のコンビニや駅の改札、ホームなど、場所それぞれに細かく使用条件があるため、それに合わせて撮影日程を組んでいます。つまり、予想外の雨のために撮影ができなくなると、すべてのパズルを組み直すことになり、かなり困ったことになるのです。

 昔の作品は、演出的な狙い通りの天気になるまで何日も「天気待ち」をしたといいます。とある大御所監督などは、あまりに天気が良すぎるので悲しい葬列のシーンを延期した、というエピソードを聞いたことがあります。

 ところが、昨今は雨のために撮影を1日延期すると、その分また人件費や交通移動費など予算がかさむため、日を改めるわけにはいきません。じっと雨が止むのを待ち続け、少しでも陽(ひ)が出た瞬間を狙って撮影しているのです。

 問題は天候だけではありません。映画『はじまりのみち』の際は、撮影当日に浜松市街の河原に到着したところ、前日の豪雨で川が増水し、地形が大きく変わってしまっていたことがありました。主人公が重要な会話をし落涙するシーンで、監督としても絶好の場所だと考えていましたので、監督とスタッフの協議の結果、結局その日は撤退し、出直すことになってしまいました。

 またシーンの季節感の問題もあります。四季を描く作品であれば、季節ごとに撮影時期をわけて撮影することもありますが、1年をかけて撮影することはなかなかできません。結果、冬なのに夏のシーンを撮影することなどもよくあります。実際、今まで手掛けた作品でも、真夏のシーンにもかかわらず、俳優の白い息が映っていたことがありました…。できればそういったシーンには気づかずに観(み)ていただきたいものですが(笑)。

 実際のところ、映画撮影というのは限られた時間と予算との闘いでもあります。しかしそんな厳しい条件の中でも、いい映画はたくさん生まれています。やはり重要なのは「忍耐」と「アイデア」!と、現場スタッフは日々力を合わせて窮地を乗り切っているのです。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2015年7月10日 無断転載禁止