紙上講演 政治ジャーナリスト 伊藤 達美氏

政治ジャーナリスト 伊藤達美氏
安倍政権「一強多弱」政治の死角

 党総裁選後は下り坂

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が15、16の両日、松江、米子両市内であり、政治ジャーナリストの伊藤達美氏(63)が「安倍政権『一強多弱』政治の死角」と題して講演した。安全保障関連法案の審議をめぐり、批判が高まる中での安倍晋三首相の政権運営は、9月の党総裁選後に下り坂に入るとの見通しを示した。要旨は次の通り。

 安倍政権は、安保関連法案という重要課題を抱え、謙虚に野党や支持者の声に耳を傾けなければならない状況にある。

 それにもかかわらず、首相が(審議中に)自ら民主党議員にやじを飛ばすなど、おごりと緩みが出ている。自民党内の勉強会で若手議員が報道批判を繰り広げたのには、感覚を疑った。

 従来の自民党ならば議員は自ら離党し、謹慎するのが当たり前だったが、それもしない。身内に甘く、党執行部に意見する議員はいない。

 総裁選では、首相が無投票で3選する可能性が高いと見ている。ただ、選挙で戦った結果選ばれるのと、無投票とでは求心力は異なり、政権運営は必然的に下り坂に入るだろう。

 国民の抵抗が表面化している安保関連法案が可決されれば、支持率は下がる。

 問題は緩やかなのか、急激に落ちるかだ。角度を抑えられるかどうかのポイントは、首相が謙虚さを取り戻して(周囲の)苦言、諫言(かんげん)に耳を傾ける度量を示し、意見を集約する努力にある。

 こうした観点で、総裁選後の党役員人事が注目される。

 ハト派の谷垣禎一幹事長の後任に、首相に近い菅義偉官房長官が起用されるとの見方がある。タカ派色が強い安倍首相に対し、考え方の違う谷垣氏が党内バランスを保つ機能を果たしてきた。それだけに来年の参院選に向けては、留任させた方が望ましい。

2015年7月17日 無断転載禁止