レッツ連歌スペシャル(要木 木純)・7月30付

挿絵・麦倉うさぎ
 今回の前句は、

役に立たないことも大切

でした。

 今に限らず、昔から、文芸は無駄だ、無駄だと言い続けられてきました。面白いことが人生には大切なんですけどね。読者の皆さまも、世の中がどう言おうと、ぜひ連歌をはじめとした文芸の楽しさを受け継いでいってほしいものです。

入浴は右足からと決めている   (松江)田中堂太

書き初めは禁煙禁酒に決まってる (安来)根来正幸

 意味のないことにこだわるのが人間。連歌は、人間性を高みに立って批判するのではなく、そのへんてこさ加減を面白がります。

老兵が去ればそれだけ若返り  (飯南)塩田美代子

いつまでもピンピンしてても嫌がられ 
               (川本)高砂瀬喜美

たのんけんしごとのじゃまはせんでごせ 
             (出雲)はなやのおきな

監督にバットを振るなとささやかれ(松江)中西隆三

 役に立たないほうがむしろいい、余計なことをしてくれるな、ということですね。

豆乳を投入しますというダジャレ(益田)黒田ひかり

幼子のポケットより出た枇杷の種(津和野)岡田忠良

古代史をひもときながら一人旅  (益田)竹内良子

雨の日も使わぬ娘がくれた傘   (美郷)芦矢敦子

カアチャンと茶飲み話で大笑い  (出雲)石飛富夫

 つまらぬこと、ありふれた日常は、他人にとっては無用かもしれない。でも、それこそが人生を充実させてくれるものなのです。ふと口をついたダジャレ、幼時の楽しい記憶、学問と旅、ちょっとしたプレゼント、日々の無駄話、そんな些細(ささい)なことを、連歌は大切なものとして表現します。

 前句に対して、「いや、そうとはいえないんじゃないの」と反発して見せるのも、もちろん連歌の面白さ。

居てくれるだけでいいよと言いはした
                (松江)森廣典子

ぐうたらの言い訳うまくなったわね(大田)有田孝政

 無用の用だとかいって、怠け者が開き直るのは、憎たらしいですね。皮肉の一つでもいってやりましょう。

窓際で目立たぬようにして定年  (江津)井原芳政

あらがわずじっと耐えてる濡れ落葉(益田)吉川洋子

 働いたら負けとかうそぶく怠け者たち。でも、当人たちは、働かないために結構気苦労をしているようです。

ヘソの緒を嫁ぐ娘に渡す母   (益田)石川アキオ

このヘソで湯が沸くことはあるまいが
               (松江)佐々木滋子

 人体で無駄なものといえばヘソ。それにも、他人には分からぬ思いが込められている。

骨肉の争いもせぬ遺産ゼロ    (松江)半田有行

 財産がないと、争いも起こらないし、かえって気楽。

防犯のベルを付けてるランドセル(出雲)黒田千華子

消火器の交換期限とうに過ぎ   (松江)花井寛子

 これらが役に立つのは、災難が起こったとき。役に立たなくってよかったということはよくありますね。

 その他、私が気に入った句。

痴話喧嘩触らぬ神に祟りなし   (浜田)勝田 艶

ケイタイの電池が切れて詐欺のがれ(松江)野津重夫

落選の候補に入れたオレの票   (益田)可部章二

暑いだの寒いだの言うご挨拶   (出雲)津戸弘光

わびさびで値打ちが上がる壺のひび(江津)花田美昭

雑草に光合成の作用あり     (松江)庄司 豊

世間ではゴミ屋敷でも資源ゴミ  (松江)本田 章

文系は改組英語は低学年     (益田)石田三章


 役に立たないこと(でも、ほんとは役に立っている)に対して、だんだんと社会が寛容さを失っているのが心配ですが、連歌を愛する方がこれだけおられれば、まだまだ日本はきっと大丈夫。

  (島根大学法文学部教授)

2015年7月30日 無断転載禁止

こども新聞