映画プロデューサーのささやかな日常(30)

企画のアイデアを得るために用意した脚本と書籍。自分が楽しまないと、面白い映画は生まれない
 企画に一番必要なことは何か

   自分の楽しさを人に伝える

 先日、僕の所属する松竹で「社内企画公募」が実施されました。これは映像を企画する部署以外(管理部、不動産部など)やグループ会社の社員から、「この原案を映画に!」という企画を公募し、面白い企画があれば採用・開発する、会社全体の意識向上・活性化・交流を目的としたプロジェクトです。

 3月から締め切りの5月まで、新入社員から定年間近の社員まで男女問わずトータル100案近くの企画書が届き、われわれ映画プロデューサー陣が審査することになりました。当然ながら多かったのは、ベストセラーの小説やマンガ、アニメを映画化する案や数十年前の映画をリメイクする案、名曲をモチーフに映画化する案、実際に起きた事件を映画にする案、等々。やはりハードルが高い故、完全なオリジナルストーリーは少ないのが残念でした。

 ところが、それら企画書に目を通してみると、気づくことがありました。多くの企画書が、「自己満足度が高くて、お客さま目線に立っていない」のです。どちらかというと淡々と、原作となる小説やマンガのストーリーを単に要約したにとどまっており、まず企画書の読み手をワクワクさせる言葉遣いになっていない…。思い入れはあるはずなのに、書いた本人も「面白そう」に書いていないように読める。まずは概要を簡潔に分かりやすく書き記すことは大事ですが、その背後にあるべき「この企画が成立することによって、どういったプロフィルの、どれだけの数のお客さまが楽しめるのか」。そのお客さま目線が欠落している企画書が多く見受けられたのです。

 まず、お客さまの入り口たる企画書を読む人は誰なのか、それを読んだ人がどう感じるのか、その相手を想像し熱意を伝える「ラブレター的な言葉」が少ないのが原因なのではないかと思います。

 僕自身いつもそうなのですが、まだ誰もが面白いとは感じておらず、自分だけが面白いと感じたアイデアを形にし、理解してもらうのは本当に難しい作業です。しかし、お客さまがいまどのような作品を楽しんでいるか、それを徹底的に見たり、体験したりすることや、現実にヒットしている企画と、自分のアイデアとの差は何なのか、足りないのは何かを検証することで、突破口は開けていくはずです。

 みんなに喜ばれる仕事とは、まずは自分が楽しみ、そしてその「熱」にお客さまを巻き込んで一緒に楽しめる方法を探すことなのではないか。今回、他人の書いた企画書を数多く読む機会があったことで、あらためて気づくことができました。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2015年9月11日 無断転載禁止