映画プロデューサーのささやかな日常(31)

現在制作中の「植物図鑑」のスコア。すてきなメロディーに仕上がっています
 映画製作における「やりくり」の秘策!?

   「目利き」のスタッフ選ぶ

 新作の撮影準備が始まっています。作品ごとにいつもあらためて意識するのは、映画製作とは、お客さまの想像を超える物語と映像をスクリーンで初体験してもらうための作業だということ。そのために僕たち作り手は、常に最先端の映像表現を追求しなければなりません。昨今、技術の進歩は目覚ましく、数年前には難しかった複雑なコンピューターグラフィックス処理や、カメラの向上により、一層美しい映像が提供できるようになりました。

 そんな最新情報を収集しつつ、作品ごとに集結した監督、スタッフ、キャストがアイデアを持ち寄り、面白い作品を作り上げるべく奮闘します。ところが世の常で、夢はただ空想しているだけでは実現しません。ああ、理想と現実…! つまり、「夢」の実現には莫大(ばくだい)なお金がかかるのです。

 いうまでもなく映画では、作品中の世界の「見栄え」がとても大事。スクリーンに映し出されるロケーションや建物や衣装、メーク、これらをケチってしまうと、たとえ物語が面白くても、明らかにガッカリな作品になってしまいます。

 衣装部いわく、ぜんぶシルクと細密な刺繍(ししゅう)で美しい衣装を作りたい。けれどハンドメードなので、一着一着が高くなる。カメラマンいわく、軽量で機動性が高く、ハイクオリティーなカメラを使いたい。けれど、最新型は旧型よりもレンタル料が高い。作曲家いわく、スケール感のある音楽を作りたいので、大人数のオーケストラ編成を組めないだろうか…。ドンブリ勘定が普通だった時代であれば、この作品では予算がないけれど次の作品で支払う、といった形でお金をやりくりしたり、別の作品でのヘソクリを持っていたりと、さまざまな裏ワザがありましたが、それは過去の話。一作品ごとに明朗な予算書の提出を求められるのは、我々(われわれ)エンターテイメント業界も同じです。あっちが出っ張ったらこっちを削り…。

 そんな状況になる前に手を打つ方法とは、腕のある「目利き」のスタッフを選ぶことです。目利きの小道具スタッフがいれば、その人独自のルートを使って、実際はプラスチック製でも高級陶器のような小道具をそろえてもらえる。優秀なカメラマンがいれば、安い旧型カメラ機材でも経験をもってして、古くさい映像にならないように工夫をしてくれます。

 それぞれがそれぞれの立場で気持ちよく努力してくれるような場を作ることが、プロデューサーの仕事のひとつだと考えます。そして、一度成功体験を共有できれば、また次の作品も一緒にやりたいと思う。それは相手も自分も同じです。そうやって、新しい映画作りの現場に向かう日々がまた始まりました。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2015年10月9日 無断転載禁止