紙上講演 みずほ総研調査本部理事 主席エコノミスト 矢野和彦氏

みずほ総研調査本部理事 主席エコノミスト 矢野 和彦氏
内外経済の現状と展望~今後を読むポイントとリスク

 潜在成長率底上げ必要

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が29、30の両日、浜田市と益田市であった。みずほ総研調査本部理事主席エコノミストの矢野和彦氏(51)が「内外経済の現状と展望~今後を読むポイントとリスク」と題して講演。米国や中国を中心に世界経済は短期的には回復するが、また危機的な状況に陥る可能性があるとし、国内では五輪需要が見込める2020年までに、経済成長の実力を示す潜在成長率を底上げしておく必要があると説いた。要旨は次の通り。

 日本の景気は現在、足踏み状態。背景には海外経済の減速があり、特に中国の景気悪化が影響している。

 中国の株価は昨年からの約1年間で、2・5倍になった。これは市場のメカニズムを無視した政府による「官製バブル」で、バブルがはじけて株価が急落する過程の中では取引売買中止など、なりふり構わない政府による相場操縦が行われた。今回の株価暴落で、中国の本質的な問題が露呈されたのに加え、景気悪化の度合いなど現状が分からないという、さらに深刻な問題を浮き彫りにした。

 今後、中国をはじめ、世界経済がさらに悪化すると日本の景気後退につながりかねない。しかし、中国は金融財政面からの景気刺激策を打ち始めており、年末から来年初めにかけて持ち直すだろう。既に、今年の夏大きく落ち込んだ乗用車販売台数と新築住宅販売価格は、どちらも少しずつ上がってきている。

 また、米国は春先までに利上げをするとみられる。これで世界経済は上向き、市場は安心感を取り戻すが、問題はその後だ。これまで長期的な経済対策を実施してきた米国の減速と中国が解決を先送りしてきた過剰ストックや過剰債務といった構造問題が同時に起こり、次の経済危機を呼び起こすのではないかといった懸念がある。一番恐れているシナリオだ。

 日本は、潜在成長率を底上げし、2020年までにさまざまな構造改革が進めば、世界的な逆風に対して影響を防ぐことができるだけでなく、これまで以上の景気回復が期待できる。そのように体質を変えられるかが課題だ。

2015年10月31日 無断転載禁止