仕事みてある記 美術や文化の魅力を伝える

「伊藤若冲と都の美術」展のギャラリートークで作品を解説する國井悠さん=松江市袖師町、島根県立美術館
 学芸員

   國井 悠(くにい ゆう)さん (松江市袖師町)



 「本物の美術(びじゅつ)や文化に直(じか)に触(ふ)れて魅力(みりょく)を伝えることができ、うれしい」。島根県立美術館(松江(まつえ)市袖師(そでし)町)の工芸担当(たんとう)の学芸員、國井悠(くにいゆう)さん(27)は、企画展(きかくてん)やコレクション展の運営(うんえい)を中心に幅広(はばひろ)い業務(ぎょうむ)を手掛(てが)け「新しい仕事も次々と担当させてもらえ、作家と直接(ちょくせつ)話す機会もあり、やりがいを感じます」と充実感(じゅうじつかん)を漂(ただよ)わせています。


 「豊臣秀吉(とよとみひでよし)が天下統一(とういつ)する直前、旅先から妻(つま)おねの侍女(じじょ)にあてた手紙です。寝具(しんぐ)を忘(わす)れたので送ってほしい、などと書かれています」。「伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)と京(みやこ)の美術 細見コレクションの精華(せいか)」展(てん)で、作品を鑑賞者(かんしょうしゃ)に解説(かいせつ)しました。「豊臣秀吉直筆書状(じきひつしょじょう)」の掛(か)け軸(じく)を前に「食が進み元気にしているとも記され、くつろいだ様子。天下人(てんかびと)・秀吉をイメージした豪華(ごうか)な表装(ひょうそう)に仕立てられています」。おすすめだった「茶の湯の心」のコーナーで丁寧(ていねい)な説明が続きました。

 大きな企画展で初めて務(つと)めた副(ふく)担当としてのギャラリートーク。「勉強して準備(じゅんび)しましたがうまく伝えられず、もどかしかったですね。もっと知識(ちしき)を蓄(たくわ)えないといけません」

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 兵庫(ひょうご)県川西市出身。小学生のころ、国立民俗(みんぞく)学博物館(はくぶつかん)で鑑賞した際(さい)「文化の違(ちが)いによって形や色使いなど、こんなに違うのか」と驚(おどろ)き、美術品の歴史や魅力、作者の思いを伝える仕事がしたいな、と思うようになりました。

 東京の大学で、焼き物をはじめ漆(うるし)、染織(せんしょく)、ガラス、金工などの工芸史を専攻(せんこう)しました。国が認定(にんてい)する学芸員資格(しかく)が得られる科目も学び、卒業とともに取得。大学院に進み、桃山(ももやま)時代の焼き物を中心にした専門(せんもん)の研究を深め「県美」に就職(しゅうしょく)しました。

 入館3年目。収蔵(しゅうぞう)品を展示する「工芸」室を運営し、定期刊行(かんこう)物「県美ニュース」の編集(へんしゅう)、作品を収蔵品に加えるかどうかの審査(しんさ)会準備にも当たっています。12月に開かれる「日本伝統(でんとう)工芸展」では全体を統括(とうかつ)する主担当です。280点の出品作は決まり、ポスターも完成。ギャラリートーク作家と連絡調整するなど、イベント関係を詰(つ)め、開幕(かいまく)直前には新聞に作品紹介(しょうかい)を連載(れんさい)します。

 「学芸員として魅力的な企画展を運営できるようになりたいし、地元の工芸作品を中心に研究し、自分の言葉で魅力を伝えていきたい」。そのためには「本を読むだけでなく、作品にじっくり触れ、雰囲気(ふんいき)をよく味わうことが大切だと思っています」

 日本伝統工芸展を通し、しっかり学ぶつもりです。

2015年11月4日 無断転載禁止

こども新聞