映画プロデューサーのささやかな日常(32)

ろうそくを手に、看護の道に進む決意を述べる学生たち
 次回作の配役にこだわった訳

   片隅の役者にも目線を


 2015年もそろそろ終わりにさしかかり、日に日に寒さが増してきましたね。僕はいま、11月中旬からクランクインする映画の準備まっさかりです。

 今回は、高校生男女2人が主人公の学園ストーリー。以前プロデュースした実写版『ゲゲゲの鬼太郎』で、ヒロイン役の井上真央さんが女子高生だったので少しだけ学校シーンがありましたが、映画全編で学校生活を描く作品を手がけるのは初めてです。

 物語は主人公たちを中心に展開しますので、無論その2人が中心で輝かなければなりませんが、今回はクラスの同級生たちにもこだわろうと考えました。実際、自分の学生生活を思い起こしてみると、小さな教室の中に30人ほどの生徒がいて、それぞれに個性があって、ぶつかり合ったりしながら、共に何かを作り上げ、成長していく-。わずか数年の学校生活で、人生についての考え方、恋愛、社会性を、ぎゅっと凝縮して学べたような気がします。人間一人一人が異なるからこそ面白い、ということを最初に知ったのは学校でした。

 そういったことを振り返り、映画の中であまり描かれないまわりの学生たち一人一人をより魅力的に描くことができれば、さらに主人公たちが生きる世界、映画の世界の厚みが増すはず、と思いました。そして、丁寧にオーディションを行うことにしました。

 この企画は1年ほど前から進めていたので、テレビドラマや映画で若い俳優たちをチェックし、「気になるリスト」を作成。そこから台本の役に合う人をピックアップしました。シンプルに表情や演技が気になったり、他人とはひときわ異なる演技をしたりする、など、僕にとって「魅力的」だった若手の方々です。オーディション開催日が決まった時点で、彼らが所属する事務所に電話を入れ、参加してほしい旨を伝えます。即答で「ぜひ!」と言っていただける方、「スケジュールがちょっと難しい…」という方、「脇役では嫌」という方等々、それぞれの立場や状況をヒアリングしつつ、参加者を決めていきました。

 20ぐらいの事務所と交渉を重ね、結局、4人の女子高生役のために、30人ほどの女優が集まり、選考には監督とプロデューサー3人と助監督が立ち会いました。見も知らぬ大人たちの前で突然、演技をするのは相当な度胸と覚悟が必要だと思います。しかし、さすがプロ。彼女たちは緊張しながらも真剣に演じました。選ぶこちらも真剣勝負です。そして、一次選考、二次選考を経て、最終的に決定した決め手は、おのおのが持っている独自の空気感や脚本の読解力でした。

 映画の片隅に映っている役者にも目線を向けていただくと、それぞれの物語があります。それもまた映画の面白み。ぜひ「新しい才能」も発見しに映画館へいらしてください!!

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2015年11月13日 無断転載禁止