論語(ろんご)で温故知新(おんこちしん)(10)


【訳(やく)】

 先生(孔子(こうし))が言われた。仁者は苦労を先にして、利得(りとく)になることは、後まわしにする。仁とはそういうものだよ。


「人のために」を優先(ゆうせん)する心を説(と)く

 この章句(しょうく)は弟子の樊遅(はんち)が孔子に「仁について教えてください」と聞いたときに答えたものです。


 ◆難(かた)きこと◆

 「難)」という字のつく言葉を考えてみましょう。「難儀(なんぎ)」「難題(なんだい)」「難問(なんもん)」など、面倒(めんどう)なこと・嫌(いや)がって避(さ)けたがることですね。すなわち、ここでは努力や工夫や忍耐(にんたい)を伴(ともな)うことを意味しています。

 考えてみると、「難」を伴うことは、意外と大事なことが多いように思いませんか? それも、「自分だけ」のことより、「人のために」ということです。これを難(むずか)しい言葉で「利他(りた)」と言います。

 したがって、「難きことを先にして」ということは、「まず自分のことは後にして、まわりの人のために」ということでしょう。

 これは、スポーツにおけるチームプレーを考えると分かりやすいでしょう。強いチームは全体の心がよくまとまっています。だから、連係(れんけい)プレーも鮮(あざ)やかです。ラグビーで有名な監督(かんとく)の言葉を紹介(しょうかい)します。

 「オールフォーワン・ワンフォーオール」(みんなは一人のために、一人はみんなのために)

 このチームは心の持ち方を変えることによって大変身(だいへんしん)して日本一になりました。そればかりではありません。チームの一人一人が皆(みな)、立派(りっぱ)に自立(じりつ)した人間に成長しました。


 ◆獲(う)ること◆

 「努力や工夫のいらない安易(あんい)なこと」、あるいは「こうすれば得(とく)をする」「人に褒(ほ)められる」などという損(そん)か得かという計算・下心(したごころ)にもとづく行いを指しています。

 ここで孔子は「獲ること」を全く否定(ひてい)しているわけではありません。誰(だれ)にでもある心です。そして、場合によっては、やる気を出して頑張(がんば)るきっかけになることもあります。しかし、「獲る心」が優先(ゆうせん)することを嫌(きら)いました。

  (私塾(しじゅく)「尚風館(しょうふうかん)」講師・小倉雅介(おぐらまさすけ))

2015年3月18日 無断転載禁止

こども新聞