レッツ連歌スペシャル(要木 木純)・12月31付

(挿絵・麦倉うさぎ)
 今年ももうすぐ終わりですね。年の暮れといえば、大掃除。「冬ごもり妻にも子にもかくれん坊」(蕪村)と決め込みたいところですが、そうもゆかず、

 忙しいふりする怠け者

 今回の前句のような体たらくになってしまいました。芭蕉に「煤掃(すすはき)は己(おの)が棚つる大工かな」の句がありますが、おかみさんにがみがみ言われて、渋々自分のうちの棚を直す大工さんの姿が、私には思い浮かびます。こんなふうに、日常のふとしたおかしみが表現できるといいですね。

掃除機をもったまま見るワイドショー

                (益田)竹内良子

食って寝て酒を飲むのに手一杯 (松江)山崎まるむ

 みんな怠け者だなあ。これでは、家族同士のいさかいが絶えませんね。

親の背を見て育ったと口ごたえ  (川本)栂野 菊

お母さんあなたに似たのわかるよね(松江)土江ユミ

母さんの視線が痛い冬休み   (出雲)野村たまえ

 でも、やる気のない人に無理に手伝わせたところで、能率も悪いし、ものを壊したりするかもしれない。

山の神百も承知で泳がせる    (浜田)勝田 艶

だませたと得意の顔が可愛くて  (安来)宇山治恵

 浅はかなぐうたら夫も許してやろう。

 職場にもこの手のタイプがいますね(自分がそうかも…)。そんなヤツに限ってうまい汁を吸う。連歌は、それを声高に糾弾するのではなくて、人間世界の不思議さ、おかしさとして、面白がりながら詠みます。

役職者ばかり集まる喫煙所    (益田)可部章二

ボーナスの査定はじまる頃となり

             (出雲)はなやのおきな

居座りが気配感じてすーと立ち  (出雲)朝倉嘉三

ことさらに大声出して長電話   (出雲)栗田 枝

俳優になって生かせよ演技力   (松江)半田有行

上役の覚えがなぜかめでたくて  (美郷)源 瞳子

要領のいいヤツだけが出世する  (出雲)吾郷寿海

亀よりも兎が出世する不思議   (松江)三島啓克

 古典や伝説を利用して、時間的・空間的な広がりを感じさせる付け方もいいですね。

奴凧切れてお江戸を散歩する   (松江)田中堂太

庄助に嫁の話がもちあがり    (江津)花田美昭

天も知り地も知り我も知っている (雲南)渡部静子

乾杯に誘われなかったキリギリス (松江)石川 倫

金次郎の息子に生まれやむを得ず (松江)福間芳枝

 以下の作品はちょっとひとりよがりで、私には付き方がよく分かりません。ただ、他のジャンルの文学と違って、連歌の場合は、とっぴな連想を、読者があれこれ推理しながら、分析する、なぞなぞを解くような楽しさがあります。適度な難解さも芸のうちですね。

朝眼医者午後は皮膚科と泌尿器科(出雲)矢田カズエ

三年目隣の芝は青く見え    (益田)石川アキオ

寝るだけでかしこくなるという枕(益田)黒田ひかり

さりげなくうまく転んで年を越す (浜田)三隅 彰

 その他、私が気に入った句を列挙します。

横になりゃ器用な足がものをいい (雲南)横山一稔

朝ドラがその日の計画くるわせる

            (熊本・天草)龍石美和子

あら居たのなんて言われてムッとする

                (益田)吉川洋子

苦しげに息を吸い込む大仰さ   (大田)大谷 勇

ギリギリになって投函する付句  (出雲)原 陽子

予定表余白にまでもメモを書き  (出雲)鬼村吉郎

 今回は、素直な句も、ひねった句も、高水準の作が多くて、紹介しきれないのが残念です。選に漏れた方も、自信のある作品を、正月にお知り合いにでも披露して、感想をきいてみてはいかがでしょうか。

 それでは、忙しい歳末、上手に怠けて、よいお年を迎えられますように。

 (島根大学法文学部教授)


2015年12月31日 無断転載禁止

こども新聞