論語(ろんご)で温故知新(おんこちしん)(31)


【訳(やく)】

 ものごとには何でも、始(はじめ)(初歩(しょほ))があり、卒(おわり)(完成)がある。人の歩む道のすべて(初歩と完成)が同時に分かる人は、聖人(せいじん)と呼(よ)ばれる立派(りっぱ)な人だけなんだよ。


初歩(しょほ)から完成へ順序(じゅんじょ)よく準備を

 「掃除(そうじ)だとか、あいさつだとか、友だちとの付き合いだとか、そんなことより、もっとだいじな勉強をしなさい」と言われたら、あなたはどう考えますか?


 ◆何でもないこと◆

 落語(らくご)の名人といわれたある人の話です。

 自分は昔、若いころに落語に憧(あこが)れて、落語の名人といわれる人のところへ弟子(でし)入りしました。入門を許(ゆる)されて喜び勇(いさ)んで、師匠(ししょう)の家に住み込(こ)みで、落語の修行(しゅぎょう)をすることになりました。しかし、師匠はなかなか落語を教えてくれません。毎日、家の掃除や雑用(ざつよう)ばかりです。そしてずいぶんたったある日、やっと落語の指導(しどう)を受けることができたそうです。掃除や日常(にちじょう)生活の当たり前のことがまともにできないで、一人前の落語家になど、なれるはずがないということでした。なんだか、分かる気がしますね。


 ◆順序(じゅんじょ)を知る◆

 いきなり、小学校1年生に6年生の勉強を教えてもちんぷんかんぷんです。ものごとには必ず順序がありますね。

 「急がば回れ」ということわざがあります。これは準備(じゅんび)がしっかりしてあれば、多少時間はかかっても確実(かくじつ)に卒(完成)に向かっていくということです。

 子どもと大人、初心者と熟練者(じゅくれんしゃ)、アマチュアとプロ(専門(せんもん)家)など、私たちのまわりは皆(みな)、同じではありません。それぞれの段階(だんかい)には、それぞれに合った準備があるはずです。大人になって、一人前といわれるようになった人でも、必ず始(初歩)があったはずです。その時期をどう過(す)ごしたかによって、人は大きく違(ちが)ってくるでしょう。

 すなわち、わたしたち普通(ふつう)の人は、「何でもない小さいこと」を軽く考えてはいけません。少しずつ完成に近づくように、ていねいに準備を重ねることが大切だと、論語(ろんご)は伝えています。

  (私塾(しじゅく)「尚風館(しょうふうかん)」講師・小倉雅介(おぐらまさすけ))

2016年1月6日 無断転載禁止

こども新聞