映画プロデューサーのささやかな日常(34)

正月に富士山の夕日に願いを込める
 未来ある若者から学んだ年始

   失敗恐れず自由な発想で


 あけましておめでとうございます。昨年も「泰然自虐」にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。2013年の4月に連載が始まって早3年近くになりました。拙いままのエッセーですが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、僕の昨年末といえば、新作映画が12月中旬に無事クランクアップしたため、この年末年始は比較的ゆっくり過ごすことができました。新作の内容についてはまだ発表できませんが、2017年公開(まだしばらく先です)、高校生たちのまぶしい青春を描いた映画です。どうぞご期待ください。

 そんな青春映画との格闘が一段落し、この年始に数年ぶりに妻の親戚の子どもたちに会いました。僕ら夫婦には子どもがいないので、うまく接することが苦手で、あまり会話は弾みませんでした(笑)。彼らも数年ぶりに会うオッサンは一体誰なのか、わからなくて戸惑ったことでしょう。

 その中で、一番年長の高3の男の子と少しだけ会話することができました。彼は幼少から両親と小学校3年生までメキシコに住んでいましたが、両親が離婚したため、母親と共に日本で暮らしていました。そんなこともあってか、独自の視点があり一風変わった男の子でした。彼は年に1回、父親に会いにメキシコに遊びに行っているうちに、日本になじめないことにはっきりと気づき、メキシコならば自由に生きることができるのではないか、と感じたといいます。そして今春高校を卒業後、父親が働くメキシコに移住することにしたそうです。

 若者には、進学先や就職先、働くべき職業について悩む権利があります。もっと言えば、未来について考えることのできる「時間」をたっぷり持っているはずです。その過程では、大きな失敗もするでしょう。それでも再びやり直すことができるのも若者の特権です。ところが、それがいまの日本社会では非常に難しくなっていると感じていたからこそ、僕は彼の決断に驚きを感じました。一方で、その意外な人生の選択を聞き、僕は彼の自由への憧れとその行動力にちょっと嫉妬しつつ、素直に応援したいと思ったのです。

 彼のような若者を応援できるような映画をもっと作らねば、と思いました。現代の日本では、大人たちの都合や圧力によって子どもたちの自由な発想や行動がますます制限されているように思えます。これからは少し(偉そうな目線にならないよう気をつけつつ)若者が人生を前向きに、失敗を恐れずに夢を見て、先を向いて生きていけるような映画をもっともっと作りたいと思いました。

 意外にも、高3の男の子にあらためて自分の仕事の目指す方向性について考えさせられた年始となりました。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2016年1月8日 無断転載禁止