レッツ連歌(下房桃菴)・1月14日付

(挿絵・岡本 健一)
<2016年新春特集>

 あけましておめでとうございます。

 この「レッツ連歌」が始まったのが、平成6年の1月。桃菴センセもまだ四十代、髪も黒々としておいででしたが、それから23年目を迎え、にがにがしくもめでたかりける白髪三千丈。これもひとえに、みなさまがたのおかげと、篤(あつ)くお礼申しあげます。

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 今年は、ぜひお薦めしたいことがあります。

「レッツ連歌」の書き写し!

 いつもこのコーナーをお楽しみいただいていることと、ひそかに自負はいたしておりますが、今年から、ただ目で読むだけではなく、書き写しを始めてみられてはいかがでしょう。

 保存するのが目的なら、切り抜きやコピーで十分なのですが、そうではありません。手を動かすことで、思わぬ発見があるはずです。

 例えば、助詞の使い方一つで、作品の価値が大きく変わってくることがよくあります。しかし、作品を読むだけだと、そのことに気づかず、つい読み飛ばしてしまいがちになります。書くという行為は、作者の句作りを追体験することになるのです。

 ついでに、選者の楽しさも、ちょっと味わってみましょう。気に入った句には「〇」、よく分からない句には「?」などと印を付けてみてください。「お見事」とか「参った」とか、あるいは「何のことじゃ」とか、一言コメントを付け加えておくのもいいでしょう。

 惜しくもボツになった自作も、もちろん並べて書き入れておきましょう。そのうちボツの理由が分かるかもしれません。選者のミスということもあるでしょうが、そのときはそのときで、また別の勉強になることと思います。

 そのノートは、世界に一冊の、かけがえのない、あなただけの連歌教本となることでしょう。

 縦書きノートというのもあるにはありますが、ハードカバーの日記帳なんかを代用するのもおもしろい。ふつうの大学ノートを縦横にして使っても、もちろんかまいません。

 だまされたと思って、とにかく一年続けてみてください。入選率がアップすること、請け合いです。

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 にがにがしくもめでたかりけり

羽根つきの羽根が鳥居に乗っかって
               (松江)石川  倫

チグハグに出さぬ賀状に来る賀状(出雲)山下  好

大入りで人手の足りぬ忙しさ  (大田)山形 俊樹

ガキどもの写真ばかりの年賀状 (出雲)吾郷 寿海

田作りはハラワタ取らぬほうが好き
               (美郷)源  瞳子

お雑煮は相手にしない二十歳  (出雲)後藤 綾子

失くしたと届けた金を妻拾い  (松江)福間 芳枝

マドンナが選んだカレは我が親友(松江)加茂 京子

金出させ新築祝うわが息子   (出雲)栗田  枝

初詣帰りに踏んだ犬の糞    (益田)吉川 洋子

イヤな世を飲んで忘れてまた飲んで
               (江津)星野 礼佑

三箇日続く大社の大渋滞    (出雲)飯塚猫の子

冥土へと一歩近づくお正月   (出雲)行長 好友

磯釣りで転んだ拍子鯛が釣れ  (松江)田中 堂太

娘(こ)が連れてきたのはボクの同級生
               (美郷)芦矢 修司

初夢のトンビはタカにしておこう(雲南)安部 小春

初夢は鷹に捕まり突っつかれ(隠岐の島)中前さつき

身に覚えないと言い張り当選し (川本)高砂瀬喜美

なにごともなくもの足りぬ年が明け
               (出雲)朝倉 嘉三

反対をしても早くもご懐妊   (江津)岡本美津子

ごちそうに昇格してた田舎汁  (美郷)芦矢 敦子

病棟の窓越しに見る初日の出  (松江)持田 高行

年収をパートの妻に追い抜かれ (出雲)放ヒサユキ

デキチャッタ婚の招待状届き  (出雲)黒田千華子

重箱の数の子ばかり勧められ  (雲南)錦織 博子

初春は田作りキンカン蕗の薹  (出雲)藤原 昌子

成人の孫も甘えるお年玉    (益田)石田 三章

女房の尻に敷かれて古希迎え  (出雲)原  愼二

新年を迎えて後期高齢者    (松江)半田 有行

初日の出厚き雲間に見え隠れ  (浜田)滝本 洋子

消費税選挙目当てでちょっと減り(益田)可部 章二

大会の俺のレコード子に抜かれ (出雲)津戸 弘光

安倍さんの邪魔するピエロ元総理(松江)相見 哲雄

鼻ピアスやってる子にも春が来て(雲南)渡部 静子

初夢は妖怪たちに迎えられ   (雲南)板垣スエ子

なにもかも娘のカレにゃ敵わない
            (沖縄・石垣)多胡 克己

免許証見せて割引してもらい  (松江)岩田 正之

孫ひ孫一度に集う五十人    (松江)水野貴美子

はじめての子供授かる老いの坂 (松江)中村 清子

ライバルがくれた賀状の一等賞 (松江)金津  功

娘らは遠くへ嫁ぎ二人きり   (出雲)石飛 富夫

初孫の名前読めない聞きとれない(出雲)矢田カズエ

センブリのお茶が叶えたダイエット
               (松江)高木 酔子

歳いらぬとは言いながら屠蘇(とそ)を酌み
               (浜田)大井 一弥

ぼく一人末吉を引く初詣    (松江)若林 明子

孫増えてお年玉にも一苦労   (浜田)山崎 重子

太ってる君が好きだとささやかれ(出雲)野村たまえ

結婚をさせてほしいと馬の骨  (松江)三島 啓克

最下位で当選をしてバッジ付け (浜田)松井 鏡子

半額のおせちが並ぶ祝い膳   (松江)川津  光

正月にやっと間に合う総入れ歯 (松江)森  笑子

肩を貸す隣の美女の高いびき  (江津)江藤  清

この春に嫁ぐ娘が注ぐビール  (江津)花田 美昭

ジイさんもオヤジもオレも猿に似て
               (松江)川津  蛙

高齢者扱いされる歳となり   (雲南)妹尾 福子

老妻はド派手な鶴の晴れ着着て (松江)三原 千穂

一本でわが子に負けた初稽古  (松江)花井 寛子

ようやっと当たる五等の宝くじ (益田)竹内 良子

顔中に墨を塗られるトンド焼き (松江)永瀬 秋風

また少し白髪増えてる初鏡   (出雲)原  陽子

喜寿はまだ青春という恋心   (松江)原  野苺

恋敵美女と賀状におさまって  (雲南)佐藤 風子

レギュラーを外されチーム勝ち進み
               (松江)佐々木滋子

女ども亭主のグチで酒を飲み  (大田)加藤 妙鳳

残された親は長寿で医者いらず (浜田)勝田  艶

酒樽を届けて先に酔いつぶれ  (飯南)塩田美代子

気に食わぬ嫁が早くも妊娠し  (松江)庄司  豊

独身でいようネなんてウソばっか
             (出雲)はなやのおきな

元カレの一人や二人くれてやる (松江)山崎まるむ

正月は昔凧揚げ今ドローン   (益田)石川アキオ

十歳に先読みされる爺の知恵  (浜田)三隅  彰

賽銭が頭に当たる初詣     (大田)杉原サミヨ

強打者をみな歩かせて優勝し  (美郷)吉田 重美

ケンカした後に突き出すプレゼント
               (松江)土江 ユミ

何度目の申かは言わぬ年女   (松江)森廣 典子

元気よく歌えたで賞いただいて (益田)黒田ひかり


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 22年前の2月24日は、「レッツ連歌」第4回が掲載された日で、そのときの前句は、「めでたくもありあやうくもあり」―。今回とよく似ていますが、これは室町時代末の『竹馬狂吟集』のパクリ。

 入選句が全部で10句。中に、「処女なのとだまし続けて初夜迎え」なんて、危ない句もありました。桃菴センセご自身の付句も第2回にご披露なさっておりますが、それがなんと、「孫ほどな若い娘と再婚し」―。

 このあたりが「レッツ」の原点だったのでしょうか。

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 それ以来、投句数もどんどん増えて、今年の新春特集は、ざっとご覧のとおり。

 陽子さんの「初鏡」―。鏡さんに白髪が生えているわけではありません。鏡に映る自分の白髪が増えたのですね。あたりまえのことですが…。

 「初鏡」という名詞にかかる「また少し白髪増えてる」ということばを、連体修飾語といいます。(新年早々小むずかしい話ですみません。)

 日本語の連体修飾語は、文脈によってさまざまなしかたで、下のことばにかかります。

 例えば、「魚の料理」と「母さんの料理」とは、一見、同じ構造のようですが、実はまったく違います。

 「お酒の好きな人」といえば、桃菴センセに違いありませんが、「桃菴センセの好きな人」といっても、ひそかに私に想いを寄せているあなたのこととはかぎりません。私が想いを寄せている別の女性かもしれないのです。

 ことほどさように融通無碍(むげ)な連体修飾語の機能を、連歌で活用しないテはありません。その工夫がシャレた表現を生み出すのです。

 陽子さんの句も、たとえば「初鏡見れば白髪が増えている」というあたりまえの表現だったら、シマリのない句になってしまいます。陽子さんの秀作と私の駄作と、どうかご納得のいくまで、何度でも読み比べてみてください。

 連体修飾語をうまく使った作品を、過去一年の入選句の中から選んでみました。

  お買い得品買って損する

 帰りにはタクシーを呼ぶ段ボール   高木 酔子

  キャンデーキャンデーアイスキャンデー

 昼寝する母さん起こす五円玉     岡本美津子

  見上げて唖然(あぜん)長き石段

 遍路道甘くみていたハイヒール    都間ゆかり

 いかがでしょうか。

 できれば、これらの秀作に対する駄作も試作してみてください。そしていい駄作ができたら、これもさきほどのノートに、ぜひ書き留めておきましょう。

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  適当に空欄埋めて叱られる

 「適当」ということばはおもしろいですね。本来は的確なさまを意味しますが、いい加減という意味でも使います。もっとも、「いい加減」ということばにしてからが、もともとはいい意味であったはずで、そのこともまた、おもしろいですね。

 次は、この前句に適当な七七の句を付けてください。適当に付けないでください。

2016年1月14日 無断転載禁止

こども新聞