秋山英宏の全豪リポート 親友との対戦

他の選手にはない温かみ

 「友人との対戦は難しかった?」。会見での外国人記者からの質問に、錦織圭はこう返した。

 「試合中は忘れようと心掛けた。とはいえ、友だちと戦うのは簡単ではない。15か16歳のころから知っている選手なので」

 2回戦で対戦したオースティン・クライチェクはIMGアカデミー在籍時の練習仲間。寮で同部屋だったこともある。

 渡米直後は日本人の仲間がいたが、彼らが帰国してしまうと錦織は一人になった。まだ英語が不自由だったため、「だれともコミュニケーションがとれなかった」。孤独な日々の中で、クライチェクには言葉を教わり、連れ立って現地の日本食レストランに行くこともあったという。

 彼らのアカデミーは時に「テニス選手育成工場」と揶揄(やゆ)される。周囲の全員がライバルという環境で、クライチェクには他の選手にはない温かみを感じていたのだろうか。

 「優しい選手というかガツガツしていないので、友だちとしても好きな選手」と錦織は言う。

 確かに友人との試合は難しかっただろう。ただ、十代前半からそうやって人間関係を築き、異国で自分の居場所をつくってきたことが、今の錦織を根底で支えているのは間違いない。

 (テニスライター)

2016年1月22日 無断転載禁止

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