秋山英宏の全豪リポート 異例のファンサービス

苦戦制した心境の表れ

 試合を終えた錦織圭がわざわざ観客席に近づき、サインの求めに応じた。タオルを2枚もプレゼントした。苦戦を切り抜けた安堵(あんど)感が異例のサービスにつながったのだろう。

 7500人収容のマーガレット・コート・アリーナには多くの日本人の観客が詰めかけていた。現地在住だという女性のグループに聞くと、錦織見たさに、この日のスケジュールが発表されるのを待ちかねて入場券を手配したという。

 錦織ファンには冷や汗ものの試合だったに違いない。ギリェルモ・ガルシアロペスは超攻撃型のテニスで挑んできた。しかも、ほとんどミスをしない。錦織はその攻めをはね返すのが精いっぱいで、本来の創造性を披露できなかった。

 緊迫した3時間弱の試合、要所で起きた観客の「錦織コール」は支えになったことだろう。会見で試合後のファンサービスについて聞かれると「まったく自然(な行動)でした」と答えた。感謝の気持ち、などと言わないのも彼らしさだろう。言わぬが花の美学である。

 試合終了の瞬間の雄たけびと、その後のファンへの対応で、十分に心境を推し量ることができる。上機嫌の後ろ姿が、いかに厳しい試合であったかを語っていた。

 (テニスライター)

2016年1月24日 無断転載禁止

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