秋山英宏の全豪リポート ツォンガと再戦勝利

同じ過ち繰り返さず

 「彼はスピードがある。それに、深いボールで押し込もうとしても下がってくれないんだ」

 ツォンガが錦織に苦手意識を持っているのは明らかだった。ここまで錦織の4勝2敗。ただ、昨年の全仏で錦織は苦汁を飲まされた。

 錦織有利の前評判だったが、ツォンガはスローペースのラリーで揺さぶりを掛けてきた。吹き荒れる強風に集中力が落ち、観客が地元のツォンガを後押しする異様な雰囲気にも惑わされ、錦織は「完全に自分を見失った」。四大大会初優勝を狙う選手としてはお粗末な崩れ方だった。

 再戦の行方は錦織のマインドセット(心構え)に懸かっていると思われた。昨年の全仏ではこれをしくじり、受け身に回ったからだ。

 錦織は試合前のコイントスが終わると、まるでラファエル・ナダルのように軽快な足取りで所定の位置に走った。要所要所で「イエイ!」と野太い声を上げ、自分を盛り上げた。錦織は眼前の相手と戦うことに徹していた。同じ過ちは繰り返さない、そんな意思が伝わってきた。

 ツォンガには借りを返した。ただ、会見で「リベンジを果たした気分か」と聞かれた錦織は「そこまで実感はない」と素っ気なかった。当たり前のことを当たり前にやっただけ、そんな自負が、ちらりとのぞいた。

2016年1月26日 無断転載禁止