紙上講演 共同通信論説副委員長 森 保裕氏

共同通信論説副委員長 森 保裕氏
最近の中国情勢と日中関係

 相互不信改善の方向に

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が28、29の両日、松江、米子両市内であった。共同通信論説副委員長の森保裕氏(58)が「最近の中国情勢と日中関係」と題して講演し、日中双方での国民感情の悪化などについて説明した。要旨は次の通り。

 2012年末に第2次安倍内閣が誕生すると、中国側は関係改善を期待した。安倍晋三首相は06年の第1次内閣発足後、小泉純一郎元首相の靖国神社参拝などでぎくしゃくした日中関係の修復のため訪中し、成果を挙げていたからだ。

 10年に起こった尖閣諸島周辺での中国漁船と日本の巡視船の衝突、12年の同諸島国有化と、その後の反日デモで悪化した関係を修復してくれると思った。だが首相は集団的自衛権の行使容認、安全保障関連法制の制定に注力していく。中国は日本の右傾化を懸念し対日不信がある。

 一方、日本には台頭する中国への脅威論がある。内閣府の世論調査によると、1978年の日中平和友好条約締結後は中国に「親しみを感じる」とした人が8割近くいたが、現在は「親しみを感じない」人が8割を超えている。

 ただ、両国の指導者に言えるが、日中間の対立を利用してはいないか。中国は日本が軍国主義に回帰しているとして、自国の軍事力を増強し、経済の減速、役人の腐敗体質、貧富の格差といった内政面の不安から国民の目をそらそうとしていないか。安倍政権も集団的自衛権の行使容認をめぐっては、中国や北朝鮮の脅威をアピールした。

 14年11月には日中首脳会談が実現し、関係改善の流れにあると思う。それでも中国国内の一部には、首相の歴史認識に対し疑念がある。9月には中国で20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれ、再び、日中首脳会談実現の可能性がある。そこが今年の注目点と言える。

2016年1月31日 無断転載禁止