論語(ろんご)で温故知新(おんこちしん)(33)


【訳(やく)】

 先生(孔子(こうし))が言われた。何ごとも、つつしみの心を持ち、行き過(す)ぎないように心がけていれば、失敗することはないだろう。


つつしみ深い心を育て見失わないで

 今も昔も、大声をあげて自分を主張(しゅちょう)することや、目立つ行いをする人が注目されやすいようです。しかし、そこでちょっとおだてられたり、夢中(むちゅう)になったりすると、周りや先が見えなくなってしまいがちです。


 ◆約(やく)ということ◆

 「約」とは「ひかえ目」「つつしみ深い」「倹約(けんやく)」という意味があります。ただし、失敗を恐(おそ)れて引っ込(こ)み思案(じあん)になることではありません。後ろ向きではなく、前向きの態度(たいど)です。

 孔子教団(きょうだん)の中で、このことを実際(じっさい)に生活の中で実践(じっせん)した弟子(でし)(顔回(がんかい))がいました。この人は孔子が最も信頼(しんらい)した人物です。

 顔回は「清(きよ)く・貧(まず)しく・たくましく」という言葉がピッタリあてはまります。なかなか今の時代では聞くことも出会うこともありません。しかし、今のようにものが豊(ゆた)かにあって、便利な世の中だからこそ大切にしたいものです。

 行き過ぎた自由や主張の中ではつつしみ深い心は育ちません。不自由や困難(こんなん)の中でこそ、育つものもあります。我慢(がまん)をして知恵(ちえ)をしぼり、努力をするのです。

 伝記に出てくる偉人(いじん)といわれる人はほとんど「約」を経験(けいけん)したり、成功してもなお、自分を見失うことなく自分の生き方をつらぬいています。


 ◆失敗◆

 失敗には「必要な失敗」と「良くない失敗」があります。しかし、誰(だれ)でも失敗することはいやなことです。それでも、生きている限(かぎ)り失敗は必ずあります。

 それでは失敗する時とはどんな時でしょう?

・自分が力不足の時

・慎重(しんちょう)になりすぎて、心 も体も固(かた)まっている時

・自信過剰(かじょう)で結果をあま く考えている時

・自分のしている(言っ ている)ことがどうい うことか、わかってい ない時

 論語では失敗のすべてを否定(ひてい)しているわけではありません。「約」の心を持って、つつしみ深い品性(ひんせい)を大事にしてほしいと願っています。

  (私塾(しじゅく)「尚風館(しょうふうかん)」講師・小倉雅介(おぐらまさすけ))

2016年2月3日 無断転載禁止

こども新聞