論語(ろんご)で温故知新(おんこちしん)(34)


【訳(やく)】

 先生(孔子(こうし))が言われた。世の中には、力が強いことや勇敢(ゆうかん)なだけで、人を思いやる心に欠けている人がいる。私はそういう礼儀(れいぎ)・礼節(れいせつ)をわきまえない者は本物の勇者(ゆうしゃ)とは思わないな。


礼儀を身につけてこそ本物の勇者

 「君子(くんし)(人格者(じんかくしゃ))でも人を憎(にく)むことがありますか?」という弟子(でし)(子貢(しこう))の問いに対して「もちろん悪(にく)むことがある」と孔子は答えています。悪むことが四つあり、その中の一つが今日(きょう)の章句(しょうく)です。


 ◆勇(ゆう)◆

 孔子は「仁者(じんしゃ)は勇があるのだが、勇者は必ずしも仁(人への思いやりの心)があるとはかぎらない」と言っています。つまり、勇ましいだけでは良くないということです。

 しかし、「義(ぎ)を見て為(な)さざるは、勇無(な)きなり」といって、正義(せいぎ)を前にして実践(じっせん)しないのは本当の勇気が足りないからだとも言っています。人として当たり前のことを果たす勇気を持てということでしょう。「見て見ぬふり」など自分に被害(ひがい)が及(およ)ばないような、保身(ほしん)の態度(たいど)などは「勇無きなり」ということになります。

 最近は「いじめ」が大きな社会問題になっています。いじめる側・いじめられる側・見ている側それぞれの立場があります。この中でよく問題にされるのが、見ている側のことです。保身になって知らんふりするより、相談相手になってそっと手をさしのべる人でありたいですね。


 ◆礼◆

 孔子やその弟子たちが生きた春秋(しゅんじゅう)時代は、裏切(うらぎ)りや騙(だま)し合いなど、国全体が混乱(こんらん)した時代でした。そんな中で、「思いやりの心を持って、弱い立場の人を大切に!」などと言っても、ほとんど受け入れてもらえません。そこで、まず、行(おこな)いのあり方(規範(きはん))を考えたのです。それが「礼」でした。礼儀作法(さほう)などは「思いやりの心」を見える形として表したものです。孔子は弟子たちに、「礼に反することは、言わない、聞かない、見ない、行わないことだ」と言っています。

 社会のリーダーとなる人は「礼」を身につけることが大事な条件(じょうけん)です。

  (私塾(しじゅく)「尚風館(しょうふうかん)」講師・小倉雅介(おぐらまさすけ))

2016年2月17日 無断転載禁止

こども新聞