映画プロデューサーのささやかな日常(36)

映画『一週間フレンズ。』主演の川口春奈さん(左)と山崎賢人さん
 映画化される原作の条件とは?

   この世界現出させてみたい


 2016年もあっという間に3月になり、春がやってこようとしています。卒業式や入学式には縁がなくなって久しいのですが、先日、数十年ぶりに卒業式に参加しました。というのも、昨年末に撮影していた映画『一週間フレンズ。』で卒業式シーンの撮影があったからです。

 『一週間フレンズ。』とは、月刊『ガンガンJOKER』(スクウェア・エニックス刊)で11年から15年まで連載された、葉月抹茶さんが描かれたベストセラーコミックです。

 高校2年の春休み、主人公の祐樹は学校の図書館で同学年の美少女、藤宮香織と出会います。そのはかなげな存在感に引かれた祐樹は「友達になりたい」と思い切って香織に告げます。ところが、かたくなな香織はまったく受け入れてくれません。以来、祐樹は何度も香織に話しかけますが、完全拒否。そこで祐樹のとった行動とは…。

 とある理由によって1週間しか記憶がもたない女子高生・香織と、そんな彼女をひたむきに想(おも)い続ける心優しい祐樹の2人が織りなす、ピュアで切ない青春ストーリーです。

 連載当時から、そのファンタジックな設定や、フワリとしたやさしい絵柄が話題となり、シリーズ発売累計は130万部を突破し、アニメ化、舞台化もされ、連載終了後の今も世代を超えて多くのファンから愛され続けています。

 そんな原作を、2年前に同僚の女性プロデューサーに読んでみてほしいと言われたことから、このプロジェクトは始まりました。

 慣れない絵柄にやや抵抗を感じつつも、読み進めると、立派なオジサンの僕ですら、なんともいえない甘酸っぱく切ない感覚に引き込まれました。テーマは、単に「恋愛」ではなく、「人を想うこと」なのではないかと自分なりに普遍性を感じ、読み終えてすぐ、「いままでにない青春映画になる」と確信したことを覚えています。

 近年多い「コミックの実写映画化」ですが、「なんでもかんでも映画にするのか」「原作のイメージを壊す」などとネット上では物議を醸したりもしています。

 しかし、もちろんすべて映画化されている訳ではありません。独自の世界観があり、しかも、肉体を持った役者が演じることで化学変化が起き、さらに奥深い体験ができる作品こそが実写化されています。コミックのキャラクターを役者が演じればイメージが異なってくるのは必然ですが、それにも増して「この世界を現出させてみたい」「役者が演じたものを見てみたい」と思えるパワーを持つ原作だからこそ、映画化されるのではないかと思います。

 公開は来年の2月です。今後また、いろいろと裏話をお届けできればと思っています!

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2016年3月18日 無断転載禁止