(76)都野津会館(江津)

趣深い外観が目を引く都野津会館
赤瓦やタイル昭和の趣

 島根県江津市都野津町の都野津会館は、JR都野津駅から徒歩約5分の同町中心部にある。外壁には昭和初期に流行した、スクラッチ(ひっかき)模様を刻んだ「スクラッチタイル」が使われており、赤茶色の趣深い建物が周囲の赤瓦の町並みによく溶け込んでいる。

 赤瓦屋根の鉄筋モルタル2階建てで、1937年に旧都野津町役場として完成。54年に周辺町村と合併して「江津市」が誕生してからは、公民館として88年まで使われた。新しい都野津公民館が同年に完成すると、都野津会館に名称変更。現在は、市の委託を受けて地区住民が管理し、各種会合や葬祭場などに活用している。

 旧都野津町役場の建設について、江津市文化財研究会の機関誌「石見潟」第25号に逸話が載っている。それによると、建設資金の工面に頭を悩ませていた当時の町長に、地元の実業家・初代佐々木準三郎氏が2万円の寄付を申し出た。

 小学校長の月給が75円程度だった時代。破格の寄付に驚いた町長が「3年賦で償還する」と返答すると、佐々木氏は「俺は金貸しじゃない。町民が喜んで受けてさえくれれば寄付する」と語ったという。

 かつて議場だった2階ホールには、その功績をたたえる佐々木氏の肖像画が、今も大切に飾られている。

2016年3月24日 無断転載禁止