レッツ連歌スペシャル(要木 木純)・3月31付

(挿絵・FUMI)
 今回の前句は、

知らぬ間にコンピューターにあやつられ

でした。コンピューターは、厳密には機械(ハード)自体を指しますが、そこはこだわらずに、インターネットやネットショッピング、それらを包みこむ高度情報社会一般を視野に入れて、付けてもらえればと思います。


 私の子供の頃は、まだ明るい未来が喧伝(けんでん)されていました。ところが、前世紀末が近づくにつれ、コンピューターによって人類が滅亡するような、SFや映画が作られるようになりました。

出番近づくターミネーター (出雲)はなやのおきな

SF映画のつらい結末     (益田)黒田ひかり


 人類がコンピューターに操られる暗黒の未来。それも面白い題材ですが、連歌では、やはり、個々人の現実における悲喜劇が関心の的となります。

 いろいろな詐欺事件でだまされる人が多いですね。

老後の夢を全部振込み     (出雲)原  陽子

欲しくもないに届く宅配  (隠岐の島)中前さつき


 これらは明白な犯罪ですが、あからさまに表にでない部分が、コンピューターの怖いところ。例えば、いつの間にか、自分の嗜好(しこう)や興味が分析されて、関連する情報が検索や広告で優先的に画面に現れるように作ってあります。自分の意志で選んでいるように思っていたのが、実はコンピューターによってそう思わされているのに過ぎないのではないか。

またも手が出る宣伝の品    (大田)丸山 葛童

画面の文字に一喜一憂     (浜田)放ヒサユキ


 インターネットの世界では、顔を見たこともない人と、知り合いになることができる。面白いけど、不気味でもありますね。

素顔知らずに増える友達    (益田)兼子 哲彦

会ってもわからんメル友の顔  (松江)石川  倫


 現実の人間はもういらないのかもしれない。

スマホなくして家に入れぬ   (出雲)吾郷 寿海

顔も見ないで告げる病名    (松江)加茂 京子

免許無くても運転オッケー   (益田)岡崎 晴世

年収だけで決めたお相手    (松江)相見 哲雄

熱き血汐(ちしお)をいかにとやせむ
               (出雲)山下  好

セルフレジとも友人となり   (松江)高木 酔子


 気味が悪いけどやはり面白い。だからみんな熱中しちゃう。連歌は、コンピューターを一面的に断罪するのではなく、人間がどういうわけかコンピューターに親近感を覚え、熱中していく不思議さに着目します。

あまりのスピードぼけておられず(川本)高砂瀬喜美

背中まるめて古稀(こき)の手習い
               (益田)石川アキオ

一億人の猫背肩凝り      (益田)石田 三章

嫁はあきらめ母はためいき   (出雲)矢田カズエ

今日もお昼はカップラーメン  (松江)花井 寛子


 その他、面白かった句。私にとっては、思いがけない付け方でした。

うならせる句ができないかしら (雲南)錦織 博子

マニュアル通りいかぬ人生   (松江)佐々木滋子

漢字書かなくなって十年    (益田)吉川 洋子

あれもこれもとママは爆買い  (雲南)妹尾 福子

容量オーバー頭フリーズ    (浜田)三隅  彰

予算編成昼夜格闘       (江津)星野 礼佑

アダルトサイト出るに出られず (安来)根来 正幸

同じ言い訳二度は通じぬ    (松江)山崎まるむ

柱時計が妙になつかし     (松江)田中 堂太


 この世は舞台。人生は一場の芝居。神か運命か、何者かに人は操られているというような発想は、古代からありましたね。われわれがコンピューターに感ずる不安は、実は人間という存在の根源に近いところから、発生しているのかもしれません。

時代を超えた浄瑠璃人形    (出雲)山田 弘之

指し手のつもりが駒になってた (美郷)源  瞳子


   (島根大学法文学部教授)

2016年3月31日 無断転載禁止

こども新聞