紙上講演 グラントワセンター長 澄川 喜一氏

グラントワセンター長 澄川 喜一氏
益田圏域の文化力を活かすまちづくり

 象徴的素材で魅力発信

 山陰中央新報社の石西政経懇話会の第200回記念例会が8日、益田市内であった。東京芸術大名誉教授で、島根県芸術文化センター・グラントワのセンター長を務める彫刻家・澄川喜一氏(84)が「益田圏域の文化力を活(い)かすまちづくり」と題して講演し、中世に益田を治めた豪族・益田氏ゆかりの「中世の食」など、地域資源を町おこしに活用することの大切さを説いた。要旨は次の通り。

 グラントワは地域に根差した趣向を凝らしてきた。屋根と壁には、色彩豊かな石州瓦を使い、街に溶け込んでいる。地元のシンボルと言ってもよい。企画展も、ファッションや津和野町出身の文豪・森鴎外などをコンセプトに行っている。

 施設の運営は、地元ボランティア団体に支えられている。開館当初から芝生の手入れやチラシの発送などで支援してもらってきた。間もなく累計入館者数が400万人を迎えるが、人口5万人規模の街にこれだけの集客力があるのは市民のおかげだ。

 グラントワだけでは地域振興は難しい。市民が知恵を絞り、何かシンボリックな素材を生かす必要がある。例えば、過去のイベント「室町文化フェスティバル」で、益田氏ゆかりの遺跡や食をPRしたように、地域の魅力を幅広く発信し、外国人客誘致などにつなげなければならない。

 地方では若者の流出が顕著だが、地方創生には高齢者の力が不可欠だ。経験や知識がある高齢者の方々には、ボランティア活動などを行い、地域のリーダーとして引っ張ってもらいたいと思う。

 さらに、活性化には地域に残るものを生かしていくという意識が大切だ。山口県の蔵元が造る「獺祭(だっさい)」はこうじ臭を取り除くことで、海外で人気になった。益田でもお酒やしょうゆといった和食の大切な原点を生かしてほしい。

2016年4月9日 無断転載禁止