暫定2車線の弊害 第1部 危険性(4)追いつかない対策

死亡事故が発生し、注意を呼び掛ける塗装や表示板、ポールが施された車線=鳥取市河原町、中国横断自動車道姫路鳥取線(国土交通省鳥取河川国道事務所提供)
“対症療法”に予算の壁

 山間部を縫うように走る鳥取市河原町の中国横断自動車道姫路鳥取線(鳥取自動車道)。暫定2車線(片側1車線)の路面には「合流注意」の文字が大きく塗装されている。さらに進むと、他区間に比べて2倍の幅20センチになったオレンジ色のポールが立っている。

 島根、鳥取両県の高速道路で大型ポールが設置された箇所は、多くが2015年に対向車線へのはみ出しで死者が出た現場だ。鳥取自動車道では同年8月、小学生2人を含む3人が犠牲になった。管理する国土交通省鳥取河川国道事務所は230万円を投じ、塗装や看板、大型ポール設置など計6項目の対策を施した。

 ただ、施工区間は約900メートルと短く、路面塗装も上り車線は見送った。安川雅雄道路管理第2課長は「予算の制約があり、原因に応じて対策するのが効果的と考えている」と説明する。


対面通行9割以上

 同年3月、浜田市金城町の中国横断自動車道広島浜田線(浜田道)で、はみ出したトラックがバスと正面衝突し、20人が死傷した事故。管理者の西日本高速道路中国支社は中央線にくぼみを設け、車線逸脱を音と振動で警告する「ランブルストリップス」を上り車線計3キロ、下り車線計4キロにわたり施した。

 北海道開発局などが事故が起きた路線に設けている路面舗装で、同支社はかねて計画していた路面の打ち替え工事に併せて実施した。だが、全区間への導入には消極的だ。広報課担当者は「コストがかかるのに加え、片側1車線区間での工事は通行規制を伴うだけに影響が大きい」とする。

 山陰両県の高速道は総延長323キロのうち、9割以上の区間が中央分離帯がない対面通行で、ほとんどの区間でポールと縁石以外の対策は施されていない。はみ出し事故はどこで起きるのか分からず、事故を受け緊急対応する“対症療法”が取られ続けている。

 暫定2車線の安全性を研究する愛媛大大学院理工学研究科の吉井稔雄教授(交通工学)は、これらの路面対策について「一定効果はあるだろうが、データに基づいた研究がない」と指摘。はみ出し事故防止には一義的に「中央分離帯の設置が有効」と強調する。


完成2車線要望へ

 島根、鳥取両県警は、抜本的対策を管理者に求めてきた。鳥取県警高速隊の瀧田昭文副隊長は「分離帯やガードレール設置を繰り返し要望している」と明かす。しかし、管理者側がコストを理由に難色を示し、足踏み状態が続くという。

 業を煮やした島根県警は新たな方針を示した。今月2日、鳥取県警と合同で開いた治安対策会議。松崎真二交通部長は、4車線化が最良としながらも「今後開通予定の区間は(2車線のまま分離帯を設けた)『完成2車線』での整備を国に働き掛けたい」と強調した。県警が公の場で政策的要望を表明するのは異例だ。対症療法では対策が追いつかない危機感が発言の背景にある。

 ただ、完成2車線の実現は簡単ではない。経済効果への期待から4車線化の要望は強く、用地買収の変更などに労力を要するためだ。県警幹部は「完成2車線での整備が難しいのは分かっている。だが、悲惨な事故を看過できない。4車線化が難しい現状では、安全な2車線を選ぶべきではないか」と訴える。

2016年2月12日 無断転載禁止