暫定2車線の弊害 第2部 道路構造(2)構造令の矛盾

分離帯設置に例外規定

 2015年10月、島根、鳥取、広島各県の高速道で対向車線へのはみ出し事故が多発したのを受け、関係機関が初めて開いた会議。国土交通省中国地方整備局の担当者に、中国管区警察局の長谷川正人高速道路管理官が切り出した。

 「島根と広島の境にある大万木(おおよろぎ)トンネルに中央分離帯を設置できないだろうか」。協議事項は暫定2車線道路(片側1車線)の安全対策。27人が集まった席上、警察側が「抜本的な対策」として分離帯の設置を申し入れた。

 中国横断自動車道尾道松江線の一部である同トンネルは、雲南市吉田町と広島県庄原市高野町を結ぶ。総延長4878メートルは中国地方の道路トンネルで最長だ。

 2車線トンネルで車両火災が発生すれば、大惨事に発展する。幸い13年3月の供用開始後、はみ出し事故は発生していないが、北側の杉戸トンネル(雲南市吉田町、延長506メートル)では2件起きている。

 暫定2車線で整備された尾道松江線は、15年3月の全線開通で交通量が増加。同年の島根県内区間のはみ出し事故は、前年比6件増の10件に跳ね上がった。大万木トンネルで起きない確証はどこにもない。

 長谷川管理官はトンネルだけでなく、全線での分離帯整備を強く求める。しかし「右から左に物事は簡単に進まないだろう」と表情を曇らす。


制約があり難色

 厳しい見方を示す理由には、道路法に基づき国が道路整備の基準を定めた「道路構造令」がある。統一性や安全性を確保するため、道路の規格に応じて車道や路肩、中央帯に求める幅員を定めた政令だ。

 構造令は道路の形状を厳しく定める一方、分離帯の設置について「地形の状況やその他の特別な理由により、やむを得ない場合は分離しないことができる」と例外規定を設けている。

 尾道松江線は将来の4車線化を見据え、例外規定を適用して整備された。主な区間の全幅は10・5メートルで、車道が上下各3・5メートル、路肩各1・75メートルを占める。

 ただ、現行では構造令が「足かせ」になっている。国交省中国地方整備局道路計画課によると、尾道松江線の主な区間で分離帯を設置するには、構造令で最低1・5メートルの幅員が必要と定めているが、余分な空間が全くないため、物理的に造れないという。

 設置する場合には幅員を拡幅し、コンクリート壁を設置する必要がある。ただ、この手法は対面事故を防げる半面、4車線化した際に撤去や修復工事が必要となり、コストが膨らむ。緊急時に車両の転回が困難になるデメリットもある。

 同課の岡本雅之課長は構造令や予算面での制約を理由に分離帯設置に難色を示し「直径が太いポールや、減速を喚起する看板設置など可能な対策を取っていく」と強調する。


事故防止に疑問

 「今の暫定2車線は欠陥道路だ」

 世界20カ国の高速道を走破し、多数の著書がある交通ジャーナリスト清水草一さん(54)は国の施策を切り捨てる。

 清水さんは、国が構造令の例外規定を「抜け道」に暫定2車線での整備を進め、はみ出し事故防止の抜本的対策となる分離帯設置が打ち出せていないと指摘し、疑問を呈す。

 「ドライバーの安全を確保するという構造令の本旨を鑑みると、とてつもなく矛盾している。構造令の改正があっていい」

2016年3月8日 無断転載禁止