暫定2車線の弊害 第2部 道路構造(3)複合リスク

「絞り」地点で走行車線に戻る乗用車(左)。後ろの車はブレーキを踏み、空間を確保する=松江市玉湯町林、山陰自動車道(画像の一部を加工しています)
「絞り」が重大事故誘発

 上下車線を簡易ポールや縁石で区切っただけの「暫定2車線」のリスクは、対向車線へのはみ出し事故だけではない。

 「またか…」

 山陰自動車道を往来する松江市在住のバス運転手広江利昌さん(60)は、職業運転手が「絞り」と呼ぶ場所での接触事故を幾度となく目撃した。

 暫定2車線が多くを占める山陰自動車道だが、所々にゆずり車線が設けられ、その区間は2車線となる。ゆずり車線が終わり、1車線に戻る地点が絞りだ。

 事故の多くは、ゆずり車線を走っていた車が、目の前の車線がなくなるのに直前で気付き、後方確認しないまま走行車線に合流し、衝突するケースという。同方向に進む車同士の事故であっても、2台の速度が大きく異なるため、重大事故を誘発する。

 時に50人を超す乗客の命を預かる広江さんは、ゆずり車線に入ると後方につけた車に前を譲り、絞りが近づく前には早めに走行車線へ戻るよう徹底する。「絞りの怖さは常に肝に銘じている」からだ。

 絞り地点に特化した事故統計はないものの、島根県警高速隊の広江信男副隊長は「散発的に事故が起きる地点なのは間違いない。全隊員が危険箇所との共通認識を持っている」とする。


スリップの危険

 冬場はさらにリスクが潜む。2015年2月14日未明、鳥取県琴浦町田越の山陰自動車道の暫定2車線区間で軽自動車が横転した。後続の乗用車がよけきれず追突し、車両撤去のため、現場周辺の7キロ区間は約3時間半にわたって全面通行止めとなった。

 降雪の日が例年に比べて多かった15年。同県警が管轄する高速道で発生した1~2月の事故は、16年同期に比べて20件増の93件(暫定値)に上った。

 同県警高速隊の瀧田昭文副隊長は「除雪した部分を少しでも外れて走行すると、スリップの危険性が格段に高まる」と指摘する。除雪作業した際、路肩に押し出された雪で走行車線が必然的に狭くなるため、わずかなハンドル操作のミスが事故に直結する。


イライラ感募る

 交通計画を専門とする長岡技術科学大大学院の佐野可寸志教授(53)は、新潟県内の暫定2車線の約10地点で、遅い車の存在が到達時間にどう影響するのかを調べ、前を走っていた場合は所要時間が2~3割増しとなるとのデータをまとめた。

 ゆずり車線がある区間にカメラを複数台設置し、ドライバーの挙動を確認。低速の車が先頭にいる場合、後続車は車間距離を詰めてあおり、ゆずり車線に入った瞬間に追い越す傾向が見て取れた。希望の速度を出せないドライバーは「イライラ感を募らせ、追い越し可能な場所で速度を出し過ぎる」と結論付けた。

 さまざまなリスクを併発する一因となっている暫定2車線。佐野教授は今後の在り方について「4車線化が最良だが、幅員を広げて中央分離帯を設けた『一部3車線化』など工夫の余地はある。道路管理者は人命を守るために、もう少しコストをかけるべきだ」と提唱する。

2016年3月9日 無断転載禁止