暫定2車線の弊害 第2部 道路構造(5)異なる事情

山陰自動車道建設促進島根県民総決起大会で早期全線開通に向けて気勢を上げる出席者=2015年9月、江津市江津町、市総合市民センター
2車線解消と全通訴え

 「はみ出し事故や全面通行止めが起きると重大な影響が出る。何としてでも4車線化をお願いしたい」

 2月17日、中国横断自動車道岡山米子線(米子道、岡山道)の完全4車線化を目指す鳥取、岡山両県の市議会連盟が国土交通省を訪ね、副会長の渡辺穣爾(じょうじ)米子市議会議長が訴えた。

 暫定2車線(片側1車線)の米子道では、無理な追い越しによる事故や、対向車線へのはみ出しが相次ぐ。これまで事故時に高速道がふさがれ、緊急車両の通行が困難になり、現場到着が遅れる事態が起きた。

 20分間の面会時間で、会長の竹原茂三・岡山県真庭市議会議長は「暫定2車線は命にかかわる」と繰り返し説いた。職員は「現状は理解している」と安全面への懸念を示しつつ、予算的余裕がないと回答した。

 4車線化に必要な目安とされる交通量は1日平均1万台。米子道は約2千台足りず、現状を考えると実現には壁が立ちはだかる。

 一方、島根、鳥取両県を結ぶ山陰自動車道(総延長282キロ)は、暫定2車線どころか、未開通区間が116・9キロに及ぶ。中でも大田市は、暫定2車線の仁摩温泉津道路(延長11・8キロ)の一部が開通した2014年3月まで未整備地域で、いまだに市内14・2キロ区間の開通時期が確定していない。


病院到着に遅れ

 14年8月11日朝、出雲市境にある大田市朝山町の国道9号の難所「仙山峠」。トラックと軽自動車が正面衝突し、軽自動車の60代男性が出血し、胸や腰の痛みを訴えた。

 大田市内で心疾患や重度の外傷患者が発生した場合は、医療インフラが整う出雲市内に搬送する。大田市消防本部は、約25キロ離れた出雲市の島根県立中央病院への搬送を決めた。

 唯一の幹線道の国道9号は、事故車がふさぎ通れなかった。病院と反対方向の西側に300メートル戻り迂回(うかい)して山越えの道を選択せざるを得ず、病院到着は通常より8分遅い36分後だった。

 血圧が低下した患者は、起伏の多い道を通る車の速度で状態が悪化する恐れがある。今岡幸治大田消防署長は「常に迂回のリスクを抱えながら業務に当たっている。4車線の高速道がベストだが、一日でも早く整備してほしい」とする。

 「時間が勝負だ」。同市立病院の西尾祐二院長は命を守る道として山陰自動車道の必要性を訴える。仮につながれば所要時間は15分短い30分になり、患者の生存率は格段に上がる。


取り残された整備

 全国の高速道路の供用率は82%であるのに対し、整備が遅れる山陰自動車道の島根県内供用率は56%。このため、関係者は毎年総決起大会を開いて気勢を上げる。山陰自動車道建設促進期成同盟会長として、事故や災害時の代替道としての役割を訴える竹腰創一大田市長は「何よりもミッシングリンク(空白区間)の解消が最優先だ。安全性を確保した上で早期整備をしてほしい」と強調する。

 ただ、決して暫定2車線を容認する訳ではない。整備が遅れ、取り残されてきたがゆえに、安全性に欠けると分かっていながら、まず開通にこだわらざるを得ない悲しい現実がある。

  =第2部おわり=

2016年3月11日 無断転載禁止