暫定2車線の弊害 第3部 役割(1)救う

ドクターカーを点検する喜美田周徳運転手(左)と生越智文医師。出動のたびに慎重なルート選択を迫られる=米子市西町、鳥取大医学部付属病院
緊急搬送の時間短縮必要

 患者の生死分ける命綱

 2014年5月、島根県赤十字血液センター(松江市大輪町)の安達恵子供給課長(59)は、出雲市内の病院から治療に伴う血液の緊急発注を受け、運搬車で山陰自動車道・松江玉造インターチェンジ(IC)を通過した。普段はスムーズに進める区間。しかし、間もなくして渋滞に遭遇した。

 「これはいけない」。片側1車線の対面通行(暫定2車線)区間のため、後へも先へも進めない。到着の遅れは治療計画の変更につながる。病院へ連絡し、患者の容体を確認しながら約12キロ先の宍道ICまでたどり着き、国道9号に降りて約30分遅れで届けた。

 使用期限が短い血液は病院での備蓄が難しい。センターの担当エリアは東は安来市、西は出雲市、南は同県飯南町。高速道での輸送が患者を救う命綱になる。

 センターによると15年冬は、事故に伴う渋滞で到着が遅れた。13年には、山陰自動車道の事故渋滞中に患者の容体が急変する恐れがあり、Uターンして反対車線を緊急走行で走り、高速道を降りて国道9号を通った事例があった。

 安達課長は「患者さんに迷惑を掛けたくない。片側に2車線あれば、緊急走行で道を譲ってもらえるのに…」と思い詰める。


前方で渋滞

 「そのまま高速道を走っていたら、袋のねずみになっていただろう」

 医師や救急救命士らを乗せて現場に向かうドクターカー。鳥取大医学部付属病院(米子市西町)で、13年5月の運行開始から運転手を務める喜美田周徳さん(64)は今年3月21日、ひやりとした体験をした。

 鳥取県大山町小竹で交通事故が発生。緊急走行で山陰自動車道・米子南ICのランプを上った所で、暫定2車線の走行車線が渋滞しているのが見えた。前方で大型トラックが乗用車2台を巻き込む別の追突事故を起こした直後だった。

 運よく居合わせたパトカーが誘導してくれた。車はバックでランプを降り、何とか一般道で現場に到着した。肝を冷やした当時を振り返り「多くの命を守るには片側2車線でなくてはならない」と強調した。


ルート選択

 重度な外傷や心筋梗塞を発症した場合、いかに早く治療を受けられるかが生死を分ける。発症から1時間は「ゴールデンタイム(命の時)」と呼ばれ、時間内に適切な措置が行える病院に搬送されれば、生存率は格段に上がる。

 この時間は、いち早くドクターカーで医師らが駆け付け、できる限りの処置を施すとさらに延長できる。「時間をどこで短縮するか。移動時間しかない」。鳥取大医学部付属病院救命救急センター助教で、乗務する生越智文医師(41)が高速道が果たす役割の大きさを説く。

 一分一秒を争う救急現場では、ドクターカーに加え最寄りの消防署から救急車が向かう。救急車から患者を引き継ぐ場所を考慮しながら、暫定2車線の高速道と一般道を通る場合で、どちらが早く到着できるのか。生越医師ら救急スタッフは出動のたびに慎重なルート選択を迫られる。

 「都会地と異なり、全ての疾患を受け入れられる病院は限られている。だからこそ道路は整備してもらわないといけない」

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 高速道は、救急搬送や自然災害時に命をつなぐ道として重要な役割を担う。暫定2車線区間が9割を占める山陰両県は万一の際、渋滞や通行止めで有効活用できない事態が想定され、運用に不安がつきまとう。第3部は果たす役割を検証し、課題を探る。

2016年4月12日 無断転載禁止