暫定2車線の弊害 第3部 役割(2)備える

全面通行止めが解除され、片側交互通行になった国道9号。代替路として山陰自動車道の早期全線開通が急がれる=2006年7月22日、出雲市多伎町小田(資料)
国道9号の代替路必要

 「本当に代わりの道路はないのか?」「迷ったら引き返せないんだ!」。2006年7月20日夜、大田市消防本部大田消防署で、当直員10人が受話器を片手に情報収集に追われた。

 出雲市多伎町の国道9号は豪雨に伴い、斜面が崩壊。大田市内から出雲市内の医療機関に救急搬送する大動脈が全面通行止めで寸断され、代替路確保が必要となった。島根県東部と異なり、山陰自動車道はつながっていない。

 出雲市境にある大田市朝山町の国道9号の難所「仙山峠」までの迂回(うかい)路は想定していた。しかし、そこから先の地の利はない。地図をにらみ、近隣住民に道路の安全性を含めた聞き取り調査を強いられた。

 山林を抜ける細道など大幅な迂回を必要としない道路の利用を検討したが、大雨で寸断している恐れがある。搬送中に足止めを食らえば、患者の生命を脅かしかねない。

 張り詰めた空気の中、選択したのは、出雲市佐田町に向かう県道を組み合わせるルート。国道9号を使うより30分遅れるものの、やむを得なかった。


空白区間

 国道9号の全面通行止めは35時間で解除となった。幸いにもこの間、生死を分ける救急事案はなかったが、署員の気は一分たりとも休まらなかった。

 「後輩にあんな思いをさせたくない」。当時、副署長として陣頭指揮した石田肇さん(62)=大田市久手町=は振り返る。

 同市消防本部によると、14年の救急出動件数は1738件。3割近い485件を出雲市内の医療機関に搬送した。国道9号への依存度は大きく、石田さんの自宅近くで建設工事が進む朝山大田道路(大田市朝山町-同市久手町、延長6・3キロ)をはじめ、山陰自動車道のミッシングリンク(空白区間)解消を待ち望む。

 06年の国道9号の全面通行止めは、通勤や物流などに大きな影響を与えた。国土交通省松江国道事務所は、迂回に伴う燃料費増など損失額を約6千万円とはじいた。経済的観点からも代替道路を確保する必要性は高い。


供用率56%

 島根県は13年度、災害時に防災活動拠点や医療施設を結ぶ道路網を定めた「緊急輸送道路ネットワーク計画」を改定した。自然条件を踏まえ、骨格となる道路を「第1次緊急輸送道路」に設定。補完する道路を第2次、第3次と位置付け、防災活動に生かしている。

 計画には過去に県内で発生した災害の記録を盛り込んだ。死者・行方不明者が107人に上った1983年の「昭和58年7月豪雨」や、5人が死者・行方不明となった2006年の「平成18年7月豪雨」をはじめ、5度の豪雨災害で計24万9392人の避難者が出たとしている。

 災害時の「命綱」に相当する第1次緊急輸送道路には、国道9号と並行して走る山陰自動車道の全線が入っている。しかし、県内の供用率は56%にとどまり、非常時のライフラインとしての機能は、まだ十分に備わっていない。

 同県の冨樫篤英土木部長は「高速道の役割は産業振興や地域活性化だけではない。災害に備えるために必要だ」と、平成18年7月豪雨や東日本大震災の教訓を踏まえ、命をつなぐ新たな道としてミッシングリンクの解消を強く訴える。

2016年4月13日 無断転載禁止