暫定2車線の弊害 第3部 役割(4)生かす

ドクターヘリの高速道路上への着陸について、運航スタッフと検討する高山博幸課長(左)=北海道釧路市春湖台、市立釧路総合病院ヘリポート
路上に直接ヘリ離着陸

 「片側1車線の高速道路上にヘリを降ろせないか」。2013年11月、北海道釧路市で開かれたドクターヘリ安全研修会。国土交通省北海道開発局釧路開発建設部の高山博幸計画課長(49)(現旭川開発建設部道路整備保全課長)が、病院や消防、運航会社の関係者に切り出した。

 釧路地区で初の高速道となる北海道横断自動車道黒松内釧路線(道東道)浦幌インターチェンジ(IC)―白糠IC(暫定2車線)の開通を1年5カ月後に控えていた。山岳地帯を貫く同区間は延長26キロの56%をトンネルが占める。場外離着陸場が少なく、緊急時の医師派遣が難しかった。

 一般的なドクヘリの運航は片道30~50キロなのに対し、北海道では同100~150キロをカバーする。急性期医療の屋台骨を支えるだけに、高山課長は「高速道で重大事故が起きた時、一人でも多くの命を救う緊急措置としてヘリ着陸を思い立った」と述懐する。


救命率向上

 救急現場直近の高速道路上にドクヘリを降ろす「ダイレクト着陸」。救命率向上が期待される半面、着地点の広さや離着陸時に吹き下ろす風、安全確保対策などハードルは高い。厚生労働省によると、高速道路上の着陸例は全国で3件のみ。山陰両県ではない。

 警察庁や国交省などは05年度、車線数や障害物、路面勾配を条件に着陸候補地を、反対車線の交通規制が不要な「A」から、着陸は不可能に近い「D」まで4段階に区分した。片側2、3車線が推奨され、暫定2車線の片側1車線は想定にすら入っていない。

 釧路地区で操縦桿(かん)を握るパイロット歴35年の中村伸好機長(59)は「片側1車線は物理的には着陸可能だが、風などの条件がより厳しくなる」と最終判断の難しさを語る。


条件を聴取

 「着陸可能な条件を聞かせてほしい」。北海道開発局は13年の研修会を機に各機関に意見聴取。開通前の道路を関係者と現地視察し、ダイレクト着陸の想定箇所を検討した。

 車線数の課題は、中央に並ぶ簡易ポールの取り外しで解消できると判断。回転翼が接触しないよう標識を動かして空間を確保し、風向風速を把握する吹き流しの設置も決めた。

 一方、立ち木など障害物で進入進出経路が確保できない場所が多く、候補地は半数に減った。最大の難関は関係機関との連携や情報共有。警察の交通規制が間に合うか、現場に向かう消防はどこか…。不安要素を全て洗い出して議論を重ねた。同局釧路開発建設部の佐々木克典道路整備保全課長(51)は「1%でも可能性があるならば、どうすればできるのか知恵を出し合った」と振り返る。

 15年8月、ルールの暫定案がまとまった。想定区間を記した図面を共有し、主要12地点を事前にヘリの衛星利用測位システム(GPS)に登録。出動要請までの流れを整理した。16年3月に開通した白糠IC―阿寒ICを含む延長48キロで現在、運用している。

 まだ実例はない。市立釧路総合病院の其田一救命救急センター長(61)は「道東道で大事故がいつ起こるか分からない。置かれた実情に向き合い、できることを追求する」と話す。

 暫定2車線はひとたび事故が起きれば、重大事故につながるリスクが高い。だからこそ、命を守るために少しでも運用の幅を広げたいとの思いが、北海道での取り組みを支えている。

2016年4月15日 無断転載禁止