暫定2車線の弊害 第4部 選択肢(1)四国・高松自動車道

暫定2車線(左)から4車線化に向けた工事が進む高松自動車道=香川県三木町
「無料化」で実績作りを

 交通量増4車線に道開く

 徳島県鳴門市から香川県を経由し、愛媛県四国中央市へ至る延長124・2キロの高松自動車道。鳴門インターチェンジ(IC)-高松市境の51・8キロにわたる暫定2車線(片側1車線)区間では、中央分離帯を備えた4車線化に向け、工事のつち音が響く。総事業費は648億円、2018年度の完成予定だ。

 09年、整備計画を決める国土交通相の諮問機関・国土開発幹線自動車道建設会議が暫定2車線から4車線化のゴーサインを出した。全線開通から6年後、沿線自治体の悲願が成就した。

 高松道の暫定2車線区間で最長距離(18・5キロ)を抱える香川県東かがわ市。藤井秀城市長(64)は「数え切れないほど陳情で霞が関に足を運んだ」と当時を振り返り、工事の早期完成を待ち望む。


目安1万台上回る

 四国最大の都市圏を形成する高松市が神戸淡路鳴門自動車道と直結し、人や物の流れが大きく変わった。

 09年、高松道の暫定2車線区間の1日平均交通量は、03年の開通時と比べて6千台多い約1万6千台。国が4車線化の目安とする約1万台を上回った。09年の大型連休には最大34キロの渋滞が発生。東かがわ市民が幹線道で利用する国道11号も慢性的に渋滞し、市民から「2車線はあかん」との声が渦巻いた。

 沿線自治体でつくる4車線化期成同盟会は交通量や経済効果はもとより、事故防止、南海トラフ地震をはじめとした災害時の代替道としての役割を訴えた。

 旗振り役を務めた前香川県知事の真鍋武紀氏(76)が強く訴えたのが事故防止だった。知事時代の2001~09年、高松道の暫定2車線区間で7件の死亡事故が発生し、9人が亡くなった。「対面通行は命を損ねる」と悲惨な事故をゼロにするのが、活動の原動力だったと明かす。


一般道の事故減へ

 ただ、暫定2車線区間が9割を占める山陰両県に目を向けると、4車線化の見通しは厳しい。15年4月~16年2月の1日平均交通量は、中国横断自動車道岡山米子線(米子道)が8402台、山陰自動車道・斐川IC~出雲IC間が4189台、中国横断自動車道広島浜田線(浜田道)は3993台にとどまり、いずれも1万台に届かない。

 交通工学を専門とする愛媛大大学院理工学研究科の吉井稔雄教授は、こうした地方の暫定2車線で交通量を確保する方策として「無料化」を提案する。

 事故が起きれば重大事故につながりかねない暫定2車線だが、自動車1万台が1万キロ走行した場合の死傷事故率(2013年)は、一般道の93・0件と比べて3・98件と低い。無料化で高速道に誘導すれば、4車線化に必要な交通量を確保でき、結果的に一般道の事故が減る-との目算だ。

 民主党政権下で無料化社会実験が行われた11年4月の1日交通量は米子道が8500台、山陰自動車道・斐川IC~出雲IC間が7700台、浜田道は1万3200台に上り、浜田道は目安をクリアする。

 無料化すれば、建設費を利用料金で償還できず、税金を投入する必要がある。実現には財源の確保やコンセンサス醸成など高い壁が立ちはだかるが、吉井教授は「一般道で事故が減る社会的便益が見込め、税金を投じる根拠は成り立つ。国は考え方を変えるべきではないか」と訴える。

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 暫定2車線の高速道路を安全にする取り組みが全国で進む。片側1車線で中央分離帯を設置する「完成2車線」をはじめとした道路構造の工夫や、中央分離帯部分への新技術導入などだ。第4部は各地の事例を取材し、山陰両県でどう生かせるのかを探る。

2016年5月9日 無断転載禁止