暫定2車線の弊害 第4部 選択肢(2)追い越し車線増設

片側1車線区間に追い越し車線の「付加車線」を整備した中国横断自動車道尾道松江線の甲奴IC―吉舎IC間=広島県三次市(国土交通省三次河川国道事務所提供)
事故抑止に効果 国推進

 「全線4車線化が最良だが、できる施策から打っていく。その一つの案だ」

 松江市内で4月中旬、島根、鳥取両県の高速道路の安全確保を目指す「山陰両県高速道路安心安全強化推進協議会」が開いた講演会。講師を務めた国土交通省道路経済調査室の山本悟司室長は、約200人を前に同省が推進する「付加車線」の考え方を示した。

 付加車線は、片側1車線の暫定2車線区間を拡幅し、追い越し車線を新設する道路構造。追突や対面衝突事故抑止に効果を発揮する。

 上下線を簡易ポールで仕切っただけの暫定2車線区間は、ひとたび事故が発生すると重大事故に直結する。国土交通省によると、2013年の調査で、自動車1万台が1万キロ走行した場合の死亡事故件数は、中央分離帯を設けた4車線以上が0・16件だったのに対し、暫定2車線は約2倍の0・30件に上った。


設置延長率は17%

 ただ、国の道路事業費は10年前と比較して約3割減少。社会保障費の増大などで今後も厳しい状況が予想される。対面事故を防ぐ抜本的対策である4車線化に向け、十分な予算があるとは言い難い。

 こうした中で同省がひねり出したのが付加車線だった。国が整備基準をまとめた「道路構造令」では、設置間隔は6~10キロ、設置延長は1・0~1・5キロと定めている。全国の暫定2車線区間の延長2538キロ(2016年2月)のうち、付加車線の設置延長は444キロで、率にして17%。山本室長は「まだ非常に低い」と整備を進める方針を強調する。


建設費用がネック

 松江市と広島県尾道市を結ぶ延長137キロの中国横断自動車道尾道松江線。島根県から広島県境を越え、口和インターチェンジ(IC、広島県庄原市)に差し掛かる2キロ区間では、付加車線工事の準備が進む。

 国交省によると、尾道松江線尾道北IC(広島県尾道市)-世羅IC(同県世羅町)間の15年10月の交通量は、平日は1日平均8400台、休日は1万3100台。同年3月の全線開通に伴い、前年同期と比べて平日は35・5%、休日は56・0%アップした。

 事故対策が急務として同省は既に8区間で設置した。口和ICに加え、世羅IC付近でも新設する計画で、上り車線の延長は10区間で計15・2キロになり、全体の11・1%を占める。低速車両の存在で、全体の走行速度が低下する暫定2車線の課題も一定程度、解消が見込まれる。

 はみ出し事故を防ぐだけならば、中央分離帯を設けた「完成2車線」が勝る。しかし、同省中国地方整備局道路計画課の岡本雅之課長は、災害時に車両転回が困難になるなどのデメリットを挙げ「現状では付加車線が最も取りかかりやすい対策」とする。

 ネックは費用だ。一般的に暫定2車線を4車線化するには、1キロ当たり12億~36億円が必要とされ、中央分離帯を設ける場合は1・4億~2・5億円で済む。尾道松江線の付加車線は、側道整備工事などと併せて実施しており、同省は個別事業費を算出していないが、分離帯より投資は確実にかさむという。

 同省は事故発生リスクなどを基準に必要箇所を選定する方針。一定の絞り込みが予想され、全体の9割を暫定2車線が占める山陰両県の高速道路で集中的に設置される保証はない。

2016年5月10日 無断転載禁止