暫定2車線の弊害 第4部 選択肢(5)ワイヤロープ

中央部にワイヤロープ防護柵を設置した道央自動車道・大沼公園IC|森IC間=北海道森町(東日本高速道路提供)
効果実証設置には課題

 北海道森町の道央自動車道大沼公園インターチェンジ(IC)-森ICが開通した2012年11月、道路中央部に国内初の新型防護柵が設置された。スウェーデンで先行導入が進む鉄製ワイヤロープ式の柵だ。

 延長9・7キロのうち、約5・2キロが片側1車線の暫定2車線。対向車線へのはみ出し事故を防ぐため、東日本高速道路が一部1・6キロ区間に試験導入した。

 14年12月、支柱に接触する物損事故があったが、人身事故に発展しなかった。同社北海道支社技術企画課の杉崎幸樹課長は「はみ出しを防いだかもしれない事例の一つ」と評価した。


たわみが衝撃吸収

 このワイヤロープは、国立研究開発法人・土木研究所寒地土木研究所(札幌市)と道路構造物メーカーでつくる鋼製防護柵協会(東京都)が08年度に研究を開始し、12年に特許取得した。

 3メートル間隔で支柱を並べ、直径1・8センチのロープ5本を横に張る。車が衝突するとロープが支柱から外れ、たわみが衝撃を吸収。車は対向車線に一瞬はみ出すが突破はしない。

 一瞬はみ出す距離を基準値の1・5メートル以内にできるかどうかが鍵だった。20トンの大型車衝突を想定した実験では1・48メートルに収まり、実用化のめどが立った。

 スペースがなくても設置できるのが最大の長所だ。分離帯設置には一定の幅員を設ける必要があるが、実質10センチあれば可能。1メートル当たり費用は分離帯(ガードレール)の1万8千円に対し、ワイヤロープは1万5千円で削減効果もある。

 支柱ははめ込み式で手作業で引き抜けるほか、事故時には柵を開放し、ふさがっていない車線に車を誘導できる。同研究所の平沢匡介主任研究員(52)は「設置を望む声が道路管理者から出ている。需要が高まれば費用はさらに安くなる」とする。


幅員最低1.5メートル確保

 暫定2車線区間が9割を占める山陰両県。費用や実現性を総合的に勘案すると、ワイヤロープは最も現実味が高いように見える。

 ただ、大きな問題がある。道路整備の指針となる道路構造令に明確な定めがなく、構造物としての解釈が定まっていない点だ。

 仮に分離帯に位置付けられれば、最低1・5メートルの幅員がないと設置できず、拡幅で余分なコストがかかる恐れがある。試験導入している道央道、紀勢自動車道、磐越自動車道の3高速道はともに「1・5メートル」を確保している。

 杉崎課長は、衝突した車が対向車線に一瞬はみ出すのを理由に「ある程度、幅員に余裕を持たせる必要がある」との見解を示す。これに対し、国交省道路局企画課の平岩洋三課長補佐は「構造令で定めがなく、現状は管理者判断に委ねられている。必要があれば、運用規定を設けるかどうかを検討したい」とする。

 低コストと機能性を兼ね備え、尊い命を守るワイヤロープ。構造令上、グレーゾーンにあり、「救世主」になるかどうかはまだ見えてこない。

    =第4部おわり=


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2016年5月13日 無断転載禁止