暫定2車線の弊害 第5部 課題(1)財源

工事が進む山陰自動車道の建設現場。全線開通と4車線化の実現には、数千億円の事業費が必要となる=出雲市内
4車線化さらに数千億円

 安全対策特化の予算枠を

 「2020年の全線開通は大変厳しい状況と言わざるを得ない」

 14年の6月定例島根県議会。県議から、県内の山陰自動車道の整備状況を問われた冨樫篤英土木部長は、全線開通に必要な残事業費を試算した結果、目標とした20年の完成は困難との見方を示した。

 当時、県内約194キロのうち、開通区間は94キロ、事業中が76キロで、残り24キロは未事業化区間だった。県は国土交通省の公表資料と県独自の試算を踏まえ、残事業費を2600億円と算出。過去10年間で最も高かった09年度の310億円を毎年つぎ込んでも、20年の全通には予算が足りないと見通した。

 現在は開通区間が108キロまで増えた。しかし、県西部を中心に事業中区間が依然として残っており、国交省の資料などに基づくと、全線開通には約2200億~2300億円が必要となる見込みだ。

 16年度当初予算で山陰自動車道の県内区間の事業費は約235億円。現在の予算配分では、全線開通までに10年程度はかかる。


国の予算減少傾向

 県内の開通済区間の大半は暫定2車線で、対向車線へのはみ出し事故のリスクを抱える。事故防止の抜本的対策は中央分離帯を設けた片側2車線への移行だが、1キロ当たり12億~36億円が必要とされる。

 仮に山陰自動車道の全区間を4車線化した場合、数千億円の事業費の上乗せが求められる。

 一方、09年度、道路特定財源が一般財源化され、道路整備のみに充当されていた税収が、他の目的の支出にも回すことができるようになった。

 この結果、国直轄の道路事業費は、社会保障費の増大などに伴い減少傾向となった。16年度当初予算は10年前と比べて25・4%減の1兆4446億円まで落ち込んだ。

 全国の高速道路を中心にした高規格幹線道路の約2700キロが未供用で、各地の予算獲得競争が激化する中、山陰自動車道の全線開通、さらに4車線化に向けては事業費の確保が重たい課題としてのしかかる。


命がかかっている

 「くれぐれも事故には気をつけて」

 70人の職業運転手が在籍する運送業の丸和運輸(安来市中津町)。大和博見社長(60)は全国各地の高速道路を走り回るドライバーに対し、出発前に安全運転を呼び掛ける。

 同業他社では、暫定2車線区間で対面衝突事故に遭った事例があり、ドライバーは「明日はわが身かもしれない」と身構える。

 同社は事故時の車両撤去作業も請け負う。山陰自動車道で事故が発生すれば、島根、鳥取両県警高速隊の要請に基づき、レッカー車で現場に向かう。

 自損、玉突き、正面衝突…。さまざまな現場に駆け付けるが、暫定2車線であることが影響し、起きた事故も少なくないという。

 「予算がないから『暫定2車線は解消できません』では納得できない。人の命がかかっている」

 大和社長は4車線化は譲れないとしつつ、遅々として進まない現状に業を煮やす。善後策として当面、道路中央部へのワイヤロープ式防護柵の設置をはじめ、国に対し、安全対策に特化した予算枠を新設するよう説く。

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 山陰両県の高速道路で暫定2車線を解消するには、どのような課題が存在するのか。第5部では、道路インフラに投入する財政が厳しさを増す中、安全な高速道路の実現に向けた方策を探る。

2016年5月23日 無断転載禁止