アキのKEIルポ2016 目の前の試合に専念

雨で中断、順延の1回戦

 「夢は、世界チャンピオン」

 小学校の卒業文集に、彼はそう明記している。日本海を望む町・松江から遠く夢見た世界の頂点。その水平線の彼方に至るまでの険しい道のりに、圭少年は、途方に暮れることはなかったのか―?

 そんな質問を本人にぶつけた時、彼は「それはなかったですね」と即答した。「そんなに先を見ていなかった。ちょっとずつ、目の前のゴールをクリアしようとしていたので」。小さな目標達成を連ねながら、彼は今に至るけもの道を踏破してきた。

 そんな錦織の哲学は、大会に挑む姿勢にも反映される。錦織は、ドロー(組み合わせ表)を見ない。もちろん次の対戦相手は確認するが、勝ち上がった先で誰と当たるかなどは気に留めない。

 錦織の2016年全仏初戦のシモーネ・ボレリ戦は、雨に行く手を遮られ、中断と順延を挟む各駅停車を強いられた。

 錦織対ボレリ戦と言えば、2年前にもウィンブルドンで日没順延を経験したが、ここでも錦織が目を向けたのは、あくまで現在進行形の事象のみ。2年前のウィンブルドンは「全く覚えてない」と白状し、報道陣を驚かせた。

 今大会も、ドローは当然、見ていない。少年の日と同じように、目の前のゴールクリアのみに専心する。

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 テニスツアーで錦織取材を続け、専門誌やネットで発信しているフリーライター内田暁(あかつき)さん(41)が全仏オープンの舞台、パリ・ローランギャロスから報告する。

2016年5月26日 無断転載禁止