暫定2車線の弊害 第5部 課題(4)安全性追求

磐越自動車道・安田IC―三川IC間に試行的に設置されたワイヤロープ式防護柵。実用化へ検証が続く=新潟県阿賀野市
早期実現へ柔軟な戦略を

 片側1車線の中央部に並ぶポールの隙間を埋めるように5本の鉄製ロープが張られている。新潟県から福島県へつながる磐越自動車道の安田インターチェンジ(IC)―三川IC間。管理する東日本高速道路が2012年9月、400メートルにわたって設置したワイヤロープ式防護柵だ。

 新技術開発に伴い、はみ出し事故防止対策として試行的に導入。既に供用開始していた暫定2車線区間を工事し直し、設置の幅員を確保した。費用は1メートル当たり26万円という。

 暫定2車線区間が全体の45%となる95・2キロを占める磐越道。中央分離帯の代わりの対策として、道路形状などを考慮し、ワイヤロープや付加車線、鋼管が衝撃を和らげる防護柵「ボックスビーム」を備える。

 同じ北陸地方で、石川県輪島市と同県穴水町を結ぶ「穴水道路」(延長6・2キロ)は、暫定2車線ながらガードレールの中央分離帯を設ける。06年の開通以降、対向車線へのはみ出し事故は起きていない。国土交通省北陸地方整備局道路計画課の増田純夫道路課長補佐(48)は「今後も安全性を高める対策を検討したい」と強調する。


例見ない特殊構造

 15年7月、有識者らでつくる国交省社会資本整備審議会の国土幹線道路部会は、高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」の中間答申を行った。

 暫定2車線について「諸外国にも例を見ない特殊な構造」と指摘。対面通行の安全性や災害時の対応を考慮し「長期間継続すべきではない」として4車線への移行だけでなく、付加車線の設置、2車線区間に連続的に付加車線を設置する「2+1」車線といった工夫を求めた。

 部会長を務める日本総合研究所の寺島実郎理事長(68)は、40年代後半に国内の人口が1億人を割ると予測。交通量の減少が見込まれる中で「道路を整備するだけのシナリオが必要になる。地元が知恵を絞って戦略を描かないと整備は進まない」と説く。


分離帯置けぬ幅員

 「中央分離帯があったならば、と悔やんだ事故は数知れない」。元岐阜県警の事故分析担当管理官で、交通安全計画アナリストの信田正美さん(68)=岐阜市=は暫定2車線で起きた事故を振り返る。

 中でも04年7月の事故は忘れられない。岐阜県郡上市の東海北陸自動車道ぎふ大和IC―白鳥IC間で、積載オーバーで右前輪がパンクしたトラックが対向車線にはみ出し、一家5人の乗用車と衝突。2台の計7人全員が命を落とした。

 大事故を機に同区間の4車線計画が早まった。しかし、多くの暫定2車線区間は「まず開通させる」という命題のもと、今も抜本的安全対策は進んでいない。

 信田さんは、暫定2車線の開通後に対策を施す難しさを痛感する。幅員が足りず、物理的に分離帯などを置けないケースが少なくないからだ。

 導き出した答えは、設計変更が可能な開通前は、弾力的に運用できるよう、あらかじめ幅員に余裕を持たせて用地取得し、分離帯を設けることだった。対照的に開通後は、付加車線増設やワイヤロープの試行を挙げ「あらゆる対策を組み合わせ、少しでも安全性を高めるしかない」と訴える。

 直ちに4車線化できない暫定2車線をどうするか。悲惨な事故を解消する大前提に立ち、地域の実態に合わせて効果的な対策を提案する戦略が問われている。

2016年5月26日 無断転載禁止