アキのKEIルポ2016 少年っぽさ原点に

決定打で勝つ試合理想

 「なかなか、男としてはつらい判断でした」と錦織が振り返るのは、試合の立ち上がりで、1-3とリードされた時のこと。相手の強打に押し込まれ、守勢に回る場面が多くなっていた。

 打開策は、高く弾む緩いボールなどを交ぜ、リズムを変えること。結果的には戦術変更が奏功し、5ゲーム連取で第1セットを奪取。以降、錦織は試合の主導権を掌握した。

 錦織の持ち味と言えば、豊富な手持ちの札を用いた、創造性に富んだプレー。それを思えば「つらい判断」は意外に響くが、彼のテニスの根っこの部分には「バンバン打って、全てウイナー(決定打)で勝つ」という究極の理想がある。

 そもそも彼がテニスに魅了された原点は、「ウイナーを奪う快感」。少年の日から変わらぬ無垢(むく)な喜びが、今も変わらぬ、錦織のテニスのバックボーンだ。

 この試合、見ていてワクワクする攻防があった。第3セットの第6ゲーム。豪快な“エアK”をたたき込み、続くポイントでは、まるで互いの力を試すように、足を止めての激しい打ち合い。一歩も引かぬ殴り合いを制した時、彼はこの日最高の雄叫びをあげた。

 パリのコートで躍動するその姿は、テニスの楽しさを追う少年っぽさと、26歳の青年の男らしさの両方を備えていた。

 (フリーライター・内田暁)

2016年5月27日 無断転載禁止