暫定2車線の弊害 第6部 提言(1)救急、災害貢献も評価を

神戸大大学院工学研究科教授 小池 淳司氏
神戸大大学院工学研究科教授 小池 淳司氏

 費用が限られる中、どう高速道路の安全性を確保するのか。上下線を簡易ポールなどで区切った片側1車線の「暫定2車線」の問題点を探る「命を守る高速道路へ」の第6部では、各分野の有識者に安全対策の在り方などを聞く。

   ◇  ◆  ◇

 -高速道路の新規着工基準に、走行時間短縮効果などを金額換算した便益(B)が、総費用(C)を上回るかどうかを判断する費用便益比(B/C(ビーバイシー))があり、「1・0」を上回るのが前提となる。

 「B/Cは効率性を示す。ただ、効率性だけでは交通量が多く、安く整備できる場所の評価が高くなるという偏りが生まれる。評価手法についても計画区間のB/Cを複数提示し、最もいい案を選ぶなら分かるが、今は一つの数字だけが評価基準になっている」


 -区間を刻んでその都度B/Cを算出し、整備する手法には課題がある。

 「山陰自動車道で松江市近郊のB/Cが2・0あり、山間部が1・0以下でも、おしなべて1・0を超せば、予算が許す限り整備すべきだ。道路はつながって初めて意味があり、区間を刻んで評価しても意味がない。(見合った交通量がなければ)計画した行政に責任が問われるからだろうが、この手法が評価の低い区間を残し、暫定2車線や未整備区間を生み出す要因になっている」


 -B/Cだけでは本来の道路の価値は計れない。

 「国民全員が同じ交通レベルを享受できる『平等性』や、日本海側の発展が日本の国土にとって必要とする『安定性』などの価値基準が必要だ。ただ、山陰自動車道は暫定2車線で事故が多く、不平等との考えがあれば、都心の高速道は渋滞で不平等という考え方もある。誰もが合意できる指標をつくるのは難しい」


 -B/Cは時間短縮、経費削減効果といった経済的要素の比重が高い。道路の安全性を加味できれば、地方路線でも評価は上がって整備が進む。

 「効率性以外の尺度を考慮しないため、安全性を加味するのは困難だ。全く異なる別の尺度として災害貢献、救急医療搬送などを評価するべきだろう」


 -安全性を考えると、4車線化が最も望ましい。何が必要になるか。

 「4車線を造る必要性を国民に知ってもらうことに尽きる。道路計画は国家戦略がないと本来策定できないが、国にビジョンが見えず、山陰両県の自治体でも望ましい道路の議論が十分にされていないのではないか。国土交通省が計画する区間のB/Cが評価され、ただ整備されているように感じる」


 -訴える際の課題は。

 「観光振興による地域活性化や、企業誘致の促進など長期的視点で将来像を描く人が行政にいないのが問題だろう。国がいらないと判断しても必要な道路はある。首長の役割は、日本の中で山陰両県の役割をどう位置付け、高めるかの視点を持ち、長期的ビジョンを示すことだ」


 -山陰両県の高速道路の安全対策はどうあるべきか。

 「交通量が多い市街地周辺は4車線にし、それ以外は2車線が妥当ではないか。無料区間が多い山陰自動車道は、市部と市部を結ぶ都市間交通と、日常的に使う生活道路の役割を持っている。地元が2車線でいいと意思決定し、最初から中央分離帯を設置できれば必ず安全な道路になる」


 こいけ・あつし 岐阜大大学院修了。鳥取大工学部社会開発システム工学科准教授などを経て、2011年10月から神戸大大学院工学研究科教授。専門は土木計画学。10年4月から国土交通省社会資本整備審議会・道路分科会中国地方小委員会委員、10年4月から1年間、島根県道路評価手法検討会委員を務めた。三重県鈴鹿市出身。47歳。

2016年6月6日 無断転載禁止