レッツ連歌(下房桃菴)・6月9日付

(挿絵・FUMI)
 後悔先に立たぬ初恋

2番線ボクは下りの汽車に乗り (松江)岩田 正之

レモンよりみかんが好きと言えなくて
               (美郷)芦矢 敦子

次々と壊れて消えたシャボン玉 (松江)持田 高行

二股をかけていたとはつゆ知らず(松江)野津 重夫

振り向いてほしくてお下げ引っ張って
               (松江)水野貴美子

あのころは男女別学でしたから (松江)加茂 京子

クラス会先生だったが十五人
             (出雲)はなやのおきな

ふりだしに戻れていいなすごろくは
               (出雲)原  陽子

一年の学級写真だけがない   (益田)石田 三章

電話して父親が出てあきらめて
            (沖縄・石垣)多胡 克己

ジャンケンで譲った私バカでした(雲南)妹尾 福子

一度だけ酔った私がバカだった
           (広島・北広島)堀田 卓爾

我慢して五十五年のエメラルド (出雲)栗田  枝

くよくよとするほど人生長くない(出雲)山下  好

還暦の同窓会で炎上し     (江津)植地 幸男

欠席と聞きホッとするクラス会 (浜田)三隅  彰

懐メロが口ついて出る月の夜  (松江)花井 寛子

あの人もおんなじほどに年重ね (雲南)渡部 静子

サッちゃんの名字は今も分からない
               (松江)川津  蛙

ひとすじに信じ込んでた運勢欄 (出雲)矢田カズエ

サッカーを選んだオレを殴りたい(出雲)野村たまえ

負けたかと思って撒(ま)いた万馬券
               (松江)田中 堂太

はやばやと尻に敷かれた初デート(益田)石川アキオ

えッあれが好きなんだヨのサインなの
               (松江)雑賀かじか

宿六は高学歴の甲斐(かい)性なし
               (松江)庄司  豊

妹がお目当てだった海水着   (益田)竹内 良子

ストレートしか知らなかった勝負球
               (益田)黒田ひかり

消しゴムを落としすぎたが運の尽き
               (江津)花田 美昭

母さんと出雲大社へ参ります  (雲南)板垣スエ子


           ◇

 克己さん、分かります。ケイタイもスマホもなかった時代、カノジョの家に電話をしても、だれが出るかは分からない。それはまだしも、下宿屋のイジワル婆さんなんか、さっき出かけたとこだとか何とか、いい加減なことばかり言って、ぜったいに取り次いでくれなかったものです。…いま思い出しても腹が立つ!

 かく、初恋が実らなかった、という作品がほとんどだった中で、意外にも、実って残念、という句も、少数ながらありました。アキオさんの句なんか、体験がなければ、とても思いつくものではありません。

 豊さんの句は、高学歴「だが」とか「でも」とか、そういう心持ちでしょうが、とは言わないで、「の」一つで済ませたところが心憎い。いつも申すとおり、よけいな説明は、なるべく避けたいものです。

           ◇

 次は、

  だれにでも噛(か)みつく犬は嫌われて

に、七七の付句。

 このところ、嬉しいことに、新人さんの投句が目立ちます。で、きょうは、ひとつヒントをこっそりと―。

 前句につられて、つい犬のことを付けたくなりますが、みんな同じことを考えますから、それでは、なかなか人には勝てません。そこで、あなただけは、「だれにでも噛みつく親父(おやじ)嫌われて」に付けるつもりになってみてください。…どうですか。発想の幅が、ぐっと広がるでしょう。

 ご健闘をお祈りいたします。

              (島根大学名誉教授)

2016年6月9日 無断転載禁止

こども新聞